IDEA AND CREATIVITY
クリエイティブの専門メディア

           

企業の資産を活かし未来の指針を打ち出す「周年」企画のつくり方

半世紀に向けて進み続けるミスチルの30周年

森本千絵(goen° アートディレクター)

Mr.Childrenは今年、メジャーデビュー30周年を迎えた。それを記念したベストアルバムやアニバーサリーツアーのアートディレクションを、goen°のアートディレクター森本千絵さんが手がけている。Mr.Childrenと森本さんが最初にタッグを組んだのは、2001年。10周年のタイミングでリリースされた『Mr.Children 1992-1995』『Mr.Children 1996-2000』の広告の企画からだった。それから20年が経ち、30周年の節目に桜井和寿さんが掲げたのは「半世紀へのエントランス」という言葉。Mr.Childrenと森本さんが描く未来とは。

桜井さんが掲げた「半世紀へのエントランス」という言葉から森本さんが制作した「エントランスタワー」。

タグラインのようなキーワード

10周年のベストアルバムは、私にとってアートディレクターとして最初の仕事でした。当時は博報堂から独立する前で、べストアルバムを告知する企画に携わりました。その後『君が好き』(2002)、『IT’S A WONDERFUL WORLD』(同)、『HOME』(2007)や『SUPER MARKET FANTASY』(2008)、『ヒカリノアトリエ』(2017)など、数々のアルバムのアートワークでご一緒させていただいて。

2017年の25周年の時に開催されたドームツアーでは「Thanks giving 25」と題して、ファンの方々へのこれまでの感謝の気持ちをたくさん詰め込んだ船で航海に出発するようなアートワークや新聞広告などを制作しました。

そこから5年ほどは、私はいちファンとしてMr.Childrenの曲を聴いていて、いい曲だなぁ、どんどん進化していてすごいなぁと感じていました。

そして今回30周年を迎えるにあたり、アートワーク制作で声をかけていただきました。2021年の半ば頃でしたが、コロナ禍の真っ最中で、ツアーを実施するのかどうかも、今後世の中がどう進んでいくかもわからない状況。

その後もしばらくツアー開催の決定もできないまま、年末に近づいたときに、桜井(和寿)さんから「半世紀へのエントランス」という言葉が生まれたんです。25周年の時にそれまでを振り返って感謝の気持ちを伝えたのとは全く異なる、30周年よりもっと先の50周年を見据えた言葉。このタイミングで、もうその先の20年を見据えて、50年に向けた入口を掲げるなんて!と驚きました。のちに何かのインタビューで、桜井さんは企業でいうタグライン、ブランドメッセージのようなものを掲げようとしたのだと読みました。最高のコピーライターですよね。

「エントランスタワー」がアートワークの要に

いわゆるプレゼンのようなことをしたのは12月27日。プレゼンといっても、25周年の時のように新聞広告のデザインを提案するわけではなく、またアルバムジャケットのデザインというわけでもなく。たぶん互いに雲をつかむような気持ちのまま、「半世紀へのエントランス」を表すビジュアルの候補を見せました。どんな趣で、どんな見え方で、どんな温度でいくか。ツアーコーディネーターとして、旅のしおりを見せる会、という感じですかね。

最初なので光と影、父と母、貨物列車など、本当にいろいろな方向性を出しました。その中で皆さんが、これが良いと興味を持ってくれたのが「エントランスタワー」というもの。「半世紀へのエントランス」と聞き、自宅でもやもやと苦悩しながらエントランス(入口)だけを積み上げてコラージュした50センチくらいのタワーをつくったんです。さらにそれを下からあおるようにスマホで動画を撮影し、Mr.Childrenの曲を付けて...

あと60%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

企業の資産を活かし未来の指針を打ち出す「周年」企画のつくり方 の記事一覧

ライムスターと頑張る社員を応援 50周年の社歌MVが完成
50周年で初CM モーショングラフィックスで描く未来とCIの意味
次の50年の在り方を提示する「大それた」企画
半世紀に向けて進み続けるミスチルの30周年(この記事です)
自然と遊びから子どもが想像力を育む公園で、企業コンセプトを体現
100周年を機にリニューアルしたミュージアム型ブランド発信拠点
鉄道と人々が「もう一度出会う」きっかけに
「昨日まで」から「明日」を見つめる100周年の旭化成
ブレーンTopへ戻る