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EDITOR'S CHECK

貝印「紙カミソリ」ほか、注目のデザインの裏側

PACKAGE
貝印「紙カミソリ」

  • 企画制作/貝印+カイインダストリーズ
  • 企画/塩谷俊介
  • 商品開発/山小瀬寛
  • D/門倉麻以、加藤弥生

貝印は4月22日から、公式オンラインストアで「紙カミソリ」の販売を開始した。使い捨てカミソリのプラスチック部分を紙に置き換えたもので、強度や耐水性など100種以上の紙を検証し開発された。価格は5色セット1100円(税込・送料込)で、今秋以降は小売店での販売や宿泊施設など法人向け販売もスタートする見通しだ。

驚くべきは、そのコンパクトさ。板状の紙を組み立てて使用する形状で、販売時には約5ミリという薄型のパッケージで販売される。重さもわずか4gで、携帯に便利な仕様だ。「2019年の取引先向けの展示会でSDGsコンセプトモデルとしてお披露目したところ、好評を得て商品化に至りました」と話すのは、商品開発を手がけた研究開発本部 研究部 次長の塩谷俊介さんだ。

薄型のパッケージにはクラフト紙を使用し、「98%プラスチック削減」というアイキャッチとともに環境へ配慮する姿勢をアピール。さらに「PAPER RAZOR」の書体はドイツの工業製品の型番表記などに使用される「DIN」を用いた。デザイン部 Lead Designer 加藤弥生さんは「無機質でニュートラル、ジェンダーレスな印象のパッケージを目指しました」と説明する。

「環境やジェンダーなど難しい問題に取り組むとともに、カミソリという道具自体が持つ課題もあります。道具を使って毛を処理する、という煩わしくもある行為をいかに斬新かつ遊び心ある形でポジティブに変換できるか──これがデザインで解決すべきポイントだと捉えていました。同時に、貝印は“人にやさしい刃物を扱う会社”なので、端的にわかりやすく組み立て方を伝えるデザインも心がけています」(加藤さん)。

商品全体のトーンとしては、より多くの人々のライフスタイルになじむよう無機質でモダンな印象にまとめている。「機能さえあればいい、というアイテムに情緒的な価値を盛り込むというチャレンジでもありました」と塩谷さん。3月に商品化を発表したのち欧米、メキシコなどからも反響があった。今後、紙製のハンドル部分に好きな色やデザイン、ロゴをレイアウトするオリジナルグッズとしての販売も想定している。

BOOK
山尾悠子『山の人魚と虚ろの王』

(国書刊行会)

  • 装丁/ミルキィ・イソベ

山尾悠子さんの新刊『山の人魚と虚ろの王』が2月25日に、国書刊行会より発売された。函の絵は、オディロン・ルドンの「『夢のなかで』Ⅷ. 幻視」。クラフト紙にスミ一色を重ね、どこか鈍い光を放つ銀色の箔(つや消し銀2B)で描いた。暗闇の中で怪しく光る目玉が、物語へと誘う。

装丁を担当したミルキィ・イソベさんは「物語に宿る気配のようなものを表現できればと考えていました」と話す。「幻想小説は起承転結の...

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