透明感のあるフリルの群れ、所作に合わせて揺れるシルエット──「TOMO KOIZUMI」の服は夢を感じさせてくれると以前から気になっていた。コロナ禍にあっても、心を華やがせてくれるのはファッションが持っている力ではと、デザイナーの小泉智貴さんの話を聞きにいった。
「服が好き」から来る創造性の強さ
代々木公園にあるアトリエは、一画にミシンが置いてあり、布の群れや縫いかけの服のパーツがそこここに──憧れの服を目の当たりにし、着させてもらいたいとお願いしたところ、快く承諾していただけた。モデルでもセレブでもない身体にどう映るか不安だったが、羽織った瞬間、がらりと変わった。艶やかなフリルが身体を覆っている高揚感──気球にのっているかのように、気持ちがふんわり上がっていく。鏡を見ると別人のような自分がいる。
服を着ること、装うことには、寒暖の調節や動きやすさといった機能を得るためでも、豊かさやセンスを人に顕現するためでもない意味がある。着た人を違う次元に連れていってくれるものであり、それはファッションの持つ創造性に負うところが大きいと感じた。
小泉さんは中学2年の時、ジョン・ガリアーノが手がけた「クリスチャン・ディオール」に衝撃を受け、ファッションに強い関心を持つようになった。そこから服をつくり始め、高校生の時にコスチュームデザイナーのアシスタントに。千葉大学に通いながら自分がデザインした服をネットで売り始めたという。繊維の問屋街である日暮里に行き、安い残反の布を選び、思い描いたデザインを形にしていった。
自己流で学んだ上に、いきなりひとりで始め、SNSで反応を得て今にいたるのは、テクニック云々というより、確かな独自性と創造性があったからだ。
新しいことをやろうとすると孤独になることを自覚していた
もともとファッションは、独自性と創造性の最たるものと言える。振り返ってみれば、70年代から80年代にかけて、原宿や青山には、マンションの一室で服をデザインしている「マンションメーカー」が数多くあり、いわゆるデザイナーブランドが生まれていた。服や雑貨を扱っている小さな路面店がポツポツできて、今のセレクトショップの発祥となってもいた。
「服が好き」が根底にあった上で、美しいものをつくりたい...