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デザインプロジェクトの現在

金井政明会長に聞く、40周年を迎えた「無印良品」のこれから

金井政明(良品計画代表取締役会長)

「無印良品」が40周年を迎えた。1980年に世に生まれ出た時、ワクワクさせてくれたのを覚えている。40歳という節目のメッセージを聞きたいと思い、代表取締役会長を務める金井政明さんを訪ねた。

2020年12月3日にオープンした「無印良品 東京有明」。関東地方で最大面積を有する売り場にはほぼ全ての商品を揃え、「暮らしのサポート」「家づくり」「街づくり」の3つをテーマした8つの新商品・サービスを展開している。

「わけあって、安い。」とともに登場

久しぶりにお会いする金井さんは、黒いジャージ素材のアシンメトリーなシルエットのパンツとカーディガンで軽やかなイメージ。「よく食べ、よく歩き、よく眠り、よく掃く。そんな生活を送っているから元気です」とにっこり。「掃く」というのは、他でもない掃除のこと。暮らしの基本を大切にしているからだろうか。話は終始、骨太のエネルギーに充ちていた。

「無印良品」が登場した頃に思いを巡らすと、ワクワクする時代感があった。ファッションの世界では、「シャネル」や「エルメス」といった海外ブランドをはじめ、デザイナーズブランドが次々と登場し、“人と違うこと=個性の表現”という価値観のもと、差別化を競う消費が繰り広げられていた。そのさなかに「無印」と謳ってブランドを否定した「無印良品」の登場は、ある種の驚きとともに受け止められたのである。

掲げられたコンセプトは「わけあって、安い。」。その「わけ」として、「素材の選択―ふだん見過ごしがちな素材を見直し、調達する」「工程の点検―生産するプロセスにおける無駄を省く」「包装の簡略化―過剰包装を避けて簡略化する」という視点も新しかった。たとえば「われ椎茸」は、選別工程を省き、大きさが異なるものや割れたものも活かして一緒に販売した。

「パンティストッキング」は、一足ずつボール紙やビニールで包むパッケージを排し、まとめて袋に入れる簡易包装など──今でも十分に通用する「良品」を世に送り出した。感性や付加価値を軸とした消費が盛り上がっていた中、「日用品における合理性を見直す」という視点は、ことさら新鮮に映った。

商品を入れる紙袋が、簡素な茶色の未晒しだったことも新しかった。当時はデザイナーズブランドが、凝ったデザインの紙袋をつくって、ブランドとしての個性を際立たせていた時代。無駄を省いた紙袋は異彩を放つ存在でもあった。

目指すのは「個店経営の超小売集団」

これからの「無印良品」について、金井さんはきっぱりと潔い。「『無印良品』は、生まれた時から消費社会に対するアンチテーゼを掲げてきたし、その姿勢はまったく変わりません」。これからは、「個店経営の超小売集団」を目指していくという。世界各国も含め、これだけの店舗数を誇る「無印良品」が個店経営を標榜する。それはまた、世界中で均質化された店を大量に展開する...

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