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デザインの見方

筑紫明朝を生み出した3文字

藤田重信

石井中明朝体仮名オールド(MMOKL)の仮名「み」「な」「そ」。

1975年、僕が高校を卒業して、前の会社写研に入社したころ。好きだったのは、橋本和夫さんが手がけた本蘭明朝でした。本蘭明朝は、クールで表情をあまり持っていないのが特徴。田舎から都会に出てきたばかりの僕は、その都会らしいドライなフォントに惹かれたんでしょうね。田舎は因習や風習、隣近所との人間関係とかが結構濃いですから。

ところが30歳くらいのころ、石井茂吉さんの石井中明朝体仮名オールドのひらがなをまじまじと見てみた。すると、「み」という字の筆さばきに愕然としました。毛筆っぽい動き、その骨格のしなやかさ。特に一画目、波打ってるんですよ。いち、に、と順に来るのではなく、いち~に、と流れているんです。そこから左下にすーっときて、右側に大きく巻き上げる部分に豊かなハリがあり、まろやかで。江戸時代の日本橋の形を彷彿とさせました。そして最後、右から中央にかけてスッと下ろすのも、弓のようなハリ、柔らかさがある。夢中になりました。

「これはなんだ?」と思い、違う字を見ると、「な」もすごい。特にほかの明朝体と違うところは、三画目のテンです。他の明朝体は引っ張っていますが、石井中明朝は本当に押し付けただけ。他の画と比べてテンが1ウエイト太いんです。でも、全体で見るとバランスが取れている。普通の文字デザイナーはウエイトMの中にウエイトBの黒さをつくる度胸は無いですよ。だからこの「な」はすごいな、と。

あと、「そ」...

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