12月はじめにヨーロッパ出張した際、アムステルダムの「TIME&STYLE」で開催されていた陶芸家の田中信彦さんの個展と、パリでオープンしたばかりの「AMBASSADE」を取材した。どちらも、クラフツマンシップを日常生活に取り入れることを提案しており、そのルーツは日本にある。
日本の陶芸家の個展を開催した「タイム アンド スタイル」
「TIME&STYLE(以下、タイム アンド スタイル)」は、「東京ミッドタウン」や「二子玉川高島屋SC」などでショップを展開し、"家具を中心としたライフスタイル"を打ち出している。国内に限らず、海外へ向けた発信にも積極的で、2017年3月、オランダのアムステルダムに4フロア900平方メートルにわたるショップをオープンした。「こんなに大きな店を出して成立するのか」と半信半疑で取材したのを覚えている。その一周年を記念して「NOBUHIKO TANAKA Japanese modern porcelain exhibition」が開催されたのだ。
「タイム アンド スタイル」の社長を務める吉田龍太郎さんは「田中信彦さんとは長いつきあい。彼の作品なら現地で評価されるに違いないという確信があった」と話す。
以前、田中さんの取材をしたことがあるのだが、独特の色合いは、銅やコバルト、クロム、ニッケルといった酸化金属を塗り、釉薬をかけることで生み出している。見た目が美しいだけでなく、手に取った時の滑らかな触感や、口をつけた時の薄さの案配が絶妙で、使い勝手のよさにつながっている。繊細な色やかたちに日本的な要素がある一方で、洋を漂わせるモダンさも備えている。世界一予約が取れないレストランとして名を馳せている「ノーマ」が日本で出した「イヌア」で田中さんの器が採用されたことが、この事実を裏づけてもいる …