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楓セビルのアメリカンクリエイティビティ NOW!

自動車専門の広告賞に見るユニークなアイデア

01 ランドローバー「テストドライブ・ビルボード」。車の販促に意外性を導入するのも、今年のオートモーティブ賞に見られるトレンドの一つ。シンガポールの繁華街に建てられたランドローバーのビルボードは、実際に試運転できる車が仕込まれていた。

規模の大小に関わらず、米国の広告会社の多くがビジネス上のゴールとして目指しているのは、車のアカウントを持つことである。広告予算が他のカテゴリーの商品とは比較にならいほど大きいことも理由の一つだが、それ以上に精神的、イメージ的なメリットも大きい。アカウントを獲得した広告会社が、車のアカウントを扱えるほど充実した内容と優秀なスタッフを持っている――そのイメージが業界に知れわたるからだ。このイメージに惹かれて、優秀なクリエイターが職を求めて集まってくる。車のアカウントを持つことは、一種の勲章的効果があるというわけだ。

米国広告界に存在する“カー・カルチャー”の中では、車の広告で“賞”を獲ることは、重要な要素である。毎年2月に米国デトロイトで行われる「ワンショウ・オートモーティブアワーズ」の受賞も、“カー・クリエイティブ”にとっては特別な意味がある。車広告専門の賞とあって注目度は高い。

受賞作品に見るトレンド

今年2月9日、「第3回ワン・クラブ・オートモーティブ広告賞」が発表された。賞のカテゴリーはプリント&アウトドア、テレビ広告、インタラクティブ、エクスペリエンシャル、オンラインビデオ、社会貢献、ディーラー広告の7項目。他の賞に比べて単純明解なカテゴリーだが、メインストリームの広告だけに、「エントリーされた広告や受賞作品には、いまの社会的なトレンドが反映されている」と、ワンクラブのVPで、この賞の生みの親ヤッシュ・エガミは言う。

例えばIoT、またはテクノロジーのマーケティングへの導入もその1つだ。サムスン「セーフティ・トラック」、ヒュンダイ「ア・メッセージ・ツー・スペース」などは、その好例である。

マーケティングアイデアに“意外性”を導入するのも、もう1つのトレンドだ。「車広告の常道は、スピード、セックス、性能、支払い方法の4つのアプローチで、それでは他車との違いを訴求できない。そこで、奇想天外なアイデアで、見ている人にアッと言わせる要素を、マーケティングに導入するメーカーが増えている」とヤッシュ。例えば、ランドローバー「テストドライブ・ビルボード」、BMW「リバース・エイプリルフール」がそれだ。

もう一つのトレンドは、優秀な自動車広告をつくる海外の広告会社が増えていることだと、ヤッシュはいう。ゴールドを受賞した9つの広告のうち、6作品が米国以外の国で制作されている。かつて、車の広告といえば、米国の広告会社の独壇場であった。「車はグローバルな商品。広告がグローバルになっても全く不思議ではない。車の広告に関する限り、他の国の広告会社が米国に追いつき、追い越している感がある」という。

“意外性”で見せるクリエイティブ

プリント&アウトドア部門で金賞をとったランドローバー「テストドライブ・ビルボード」は、シンガポールY&Rの作品。シンガポールの繁華街に設置されたビルボードには、「この車をテストドライブしてみてください」という意外なメッセージが書かれている。実は、ビルボードには実際の車がはめこまれていて、希望者はその車でテストドライブができるのだ。数カ所に設置されたテストドライブ・ビルボードの前には、テストドライブの希望者が列をつくった。普通は不動、二次元のビルボードが、実際の車でできており、しかもテストドライブができるという奇抜なアイデアが当たり、「テストドライブが10倍に増えた」とシンガポールY&Rは報告している。

エクスペリエンシャル部門で金賞を獲ったBMWのキャンペーン・タイトルは「リバース・エイプリルフール」。制作は、ニュージーランドにあるオークランドDDB。

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