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「アドバタイジング・ウィーク」に見た“アドバタイジング・フォー・グッド”

楓セビル

01 11年目を迎えるアドバタイジング・ウィーク。約9500人の参加車者を集めた。開口一番、WPPグループ CEOマーティン・ソレルは、「アドバタイジング・ウィークはおかしい。アドバタイジングという言葉を取るべきだ」と発言し、広告業界の変化を伝えている。

9月末から10月の頭にかけての一週間、ニューヨークで恒例のアドバタイジング・ウィーク(以後AW)が開催された。約9500人の志高いアドマンが、全米のみならず、世界各国から集まり、広告業界が直面しているさまざまな問題をテーマにしたパネル・ディスカッションやスピーチ、ワークショップなど、200を越すイベントが華やかに展開された。広告業界独特の自画自賛、ナルシズムなどが、イベントのあちこちにちらほらと顔を見せてはいたが、このイベントは成功裏に終わった。

主役はデジタル

2015年で11年目を迎えた。この間に、大きく変わった広告の姿が、今年のAWにもはっきりと表れていた。広告業界は、完全にデジタルにとって代わられているのだ。出席者も11年前のようにコピーライターやアートディレクター志望の若いアドマンではなく、グーグルやヤフー、フェイスブック、AOL、ピンタレスト、インスタグラムなどに入社を希望するデジタル・ネイティブたちで占められた。

多少、“広告離れ”している印象の今年のAWにいち早く気づいたのだろう、WPPグループCEO マーティン・ソレルは、初日に行われたメディアリンクのCEO マイク・ケーザンとの対談で、「アドバタイジング・ウィークという言葉を変えるべきだろうね。何と呼んでいいかは思いつかないが、とにかくアドバタジングという古いコンセプトはこのウィークに当てはまらない」と提言している。

広告の力を使った社会貢献

とは言え、デジタル主眼のイベントの中にも、広告の存在価値を実証するパネルもいくつかあった。「よいことをして成功する:目的の配当」(Doing Well by Doing Good:The Purpose Dividend)と名付けられたセッションもその一つだ。「広告は往々にして無駄なものを買わせる方便だとして非難を受ける。だが、広告の力を借りて社会貢献している例はいくつもある」と、パネルの司会を務めたD&AD CEO ティム・リンゼーは言う。

これまで、こういった広告は「コーズ・マーケティング」、「アドボカシー・アドバタイジング」などと呼ばれていたが、最近では「アドバタイジング・フォー・グッド」と呼ばれる。背後には、「世界を良くする、世界のためになる良い広告」という意味が潜んでいる。このパネルでは、最近登場し、効果を上げた“フォー・グッド”広告キャンペーンが、制作した広告会社のクリエイターによって紹介された。「この正真正銘の広告活動、広告効果を見て、みんなほっとしたようだ」と、広告評論家バーバラ・リパードは感想を述べている。

全盛期の「フォー・グッド」広告

この業界に詳しいコーズ・マーケティング・フォーラム社 社長デイビッド・ヘッセキールは、「この種の広告は、いま全盛期を迎えている」という。理由の一つは、ミレニュアルと呼ばれる若い団塊世代にある。ミレニュアル社員や消費者は、ブランドの提言をなかなか信じない。そして、企業の姿勢や態度をよく観察している。そういう“フォー・グッド”な企業のブランドだけを信じ、好意を持つ。企業が、よい社員、顧客を獲得するためには“フォー・グッド”の姿勢が必須条件なのだ。

“フォー・グッド”広告が流行っているもうひとつの理由は、「それを制作する広告会社のクリエティブたちが、こういった仕事に燃えるからだ」と …

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