アートと企業(ビジネス)の関係に変化が生まれている。近年「コミッションワーク(委託制作)」と呼ばれる、企業とアートの新しい協働が注目されているが、彫刻家の名和晃平さんもその分野で活躍する一人。今回は、コミッションワークのプロデュースを行う編集者の後藤繁雄さん、安川電機の仕事を通して名和さんとアート作品制作を企画した電通の阿部光史さんの3人が、未来のアートコラボレーションを語った。
アーティストの売り出し方がドラスティックに変わってきた
阿部▶ 2015年に100周年を迎えた安川電機さんから、100周年記念の新社屋のパブリックスペースにモニュメントを作りたいとお話があり、後藤繁雄さんに相談して名和晃平さんを紹介していただいたのがこのトークショーのきっかけです。
後藤▶ 安川電機は世界的に有名な産業ロボットの会社です。100周年を迎えたこの企業には、これから100年の間日本の顔になるようなアーティストを選出しなければいけない。そう考え、名和さんをキャスティングしました。名和さんが面白いのは、自分でプロダクションを持っているところです。昔のアーティストは海外の強いギャラリーに移籍することで海外進出したものですが、新しいアーティストは名和さんのように自分でプロダクションをつくり、海外のギャラリーと組んでプロモートしている。アーティストとギャラリーの関係は進化しているのです。今日は名和さんに作品をプレゼンテーションしてもらいます。
名和▶ 「PixCell(ピクセル)」シリーズは、インターネットで収集したオブジェを大小のクリスタルガラスの球体で被膜した作品シリーズです。球体はレンズです。いま地球上にレンズを持ったメディアは無数にあります。レンズは視覚メディアの象徴で「PixCell=映像の細胞」は、世界中のレンズがオブジェに接して塊ができているイメージを表現しています。オブジェはレンズを通してしか見えない存在になっている。極めて現代的なものとして、このフォーマットを作り続けています。安川電機のエントランスには、「PixCell」シリーズのフォーマットで制作した高さ5メートルの《PixCell(ピクセル)-Double(ダブル) Muse(ミューズ)》を設置しました。

安川電機のエントランスに登場した「ミューズ」とは?
阿部▶ ダブルミューズのテーマは何ですか。
名和▶ 安川電機の工場を見学させてもらったら …