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電通デザイントーク 中継シリーズ

IoTが変える社会で広告会社の役割はどう変わる?

坂村健×佐々木康晴

IoT社会が夢物語ではなくなり、広告業界においても身近なテーマになってきた。東京大学の坂村健教授は、約30年前からIoTの未来を予見し、オープンなコンピュータアーキテクチャ「TRON(トロン)」を構築したことで知られる人物。そして、電通の佐々木康晴さんは、坂村研究室から電通に入社した唯一の弟子だという。「モノとモノがつながりあう世界」について、それぞれの立場から2人が語った。

「IoT買ってこい」ではうまくいかない

坂村 「IoT」という言葉がバズワードになっていますけれども、この言葉はマーケティング用語です。以前は「パーベイシブコンピューティング」や「ユキビタス」と言う呼び方が多かったのですが、みんな同じ意味です。最近はわかりやすさのためかIoTと呼ばれることが増えています。物がインターネットにつながると、例えば会場の入場者数や室内の温度など、さまざまな“状況”を人が仲介することなく自動的に把握できるようになります。生産機械のオートメーション化を超えてIoTは社会全体の最適制御──つまりは省力化や省エネ化、人件費などのコスト削減につながる技術だというわけです。

IoTは今、過度な期待のまっただ中にあります。期待が最高潮の時にその技術を使ったサービスや製品が提供されれば、新しいマーケットが開けて成長しますが、具体的な形として提供されなければ、期待値はどんどん落ちていきます。そのうち「ああ、IoTね。利益につながらないからやめたよ」ということになりかねない。研究開発には時間がかかります。マーケティングと研究開発のサイクルはぴったり合うものではない。実用化するためには、ここ数年は辛抱が必要です。そもそもIoTは概念ですから、「IoT 買ってこい」じゃうまくいきません。哲学や考え方への理解が必要です。

私はもともと、組み込みコンピューターの研究をしていました。30 年前から続けている「TRONプロジェクト」は、必要な瞬間に必要な応答を返すリアルタイムOS技術の研究開発です。ケータイの電話機能や、デジカメが一瞬でピントを合わせる機能などに活用されています。そのプロジェクトのゴールが「HFDS」(HighlyFunctional Distributed System)という言葉で、あらゆる機械の中のコンピューターが全部ネットワークでつながるという概念を提唱し、1987年には本も出しました。これが証拠になって、2015年にITU(国際電気通信連合)が現代のデジタル社会に貢献した世界の6人に与えた賞を受賞しました。何が言いたいかというと、日本がこの分野を切り開いたと言っても過言ではない。なのに、まるで目新しいものが来たかのようにIoTに驚いているんです。

1989年には、住機能をリッチ──高機能化することを目指して、住宅の全てのパーツをコンピューターでコントロールする「TRONハウス」を作りました。今でいうスマートハウスです。科学技術は実用化されるまで20 ~ 30年はかかります。スマートハウスも、まさに今やっと商品化され始めています。2004年にはサステナビリティ──つまりエコを目指してトヨタと超インテリジェントハウス「PAPI(パピ)」を作りました。2017年にはLIXILグループとさらに次のモデルを発表する予定です。技術コンセプトはIoTで同じですが目指すものについては、エコやリッチではない第三のキーワード──まだ言えないのですが、概念も大きく変えて登場します。

「クローズドIoT」から「オープンIoT」へ

坂村 IoTの研究自体はかなり進んでいて、何をどうしたらいいかはわかってきています。あとはコストダウンや ...

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