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感じるブックジャケット

Timeless, Mountain

小林弘和、山田春奈(SPREAD)

電子書籍では得られない紙の本の魅力のひとつが、手触りや質感だ。ブックジャケットをつけられるのも本ならではの楽しさ。さまざまな質感を持つ竹尾のファインペーパーを使用し、そこに多彩な印刷加工技術を掛けあわせることで、触って感じる新しいブックカバーを提案していく。

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01 ブックジャケット使用例

対話を生み出すデザイン

20年の節目を迎えた紙、ヴァンヌーボ。今なおトップを走り続けることに敬意を表し、SPREADが制作したのは、山と山が重なり、見る人にさまざまな解釈を生むブックジャケット。「長年支持を得ている理由は、普遍的価値を持っているからだと思います。その象徴としてまず脳裏に浮かんだのが山でした。人類が文化を築く前から存在し、神聖なものと讃えられてきた山。山は長い年月とともに緊張と柔軟を包容します。そのイメージとヴァンヌーボが重なりました」(小林弘和さん)。

インキの発色の良さと写真の再現性が高いことで知られるヴァンヌーボの特質を考え、三角で図形化した山を色と色の連なりで表現している。「鍾乳洞など自然が作りだす形に心奪われることがあります。そういう普遍的な美しさ、意図を越えた偶発性をデザインに呼び込もうとしました」(小林さん)。山を描いた紙を無造作に折り曲げ、それを写真撮影。コンピュータに取り込んで配色し、彩度と明度の高い色の重なりを生み出した。

配色はピンクとその反対色の黄緑、雪山をイメージした銀色、さらに銀箔とパール箔を加えている。3版で印刷したピンクの重層と色の重なりで新たに生まれた色、そして銀箔の網点が溶け合い、複雑に絡んだ色の表情が楽しめる。

図案を三角数で構成したのもポイントの1つ。三角数とは正三角形の形に点を並べたときに並ぶ点の総数に合致する自然数のこと。山の頂の数を1、3、6、10と4版に分けて刷り、合計すると20になる。ヴァンヌーボの歴史を導き出している。

「山と認識する人もいれば、人の感情の起伏と捉える人もいます。答えは1つではなく、見る人の想像力の豊かさで千変万化するもの。紙と人を結びつけ、対話を生み出すデザインを目指した」(山田春奈さん)と語った。

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02 燕三条 工場の祭典
03 相対性理論「正しい相対性理論」
04 Life Stripe展 (RAPPAZMUSEUM BASEL,SWISS/~12月4日まで)



すぷれっど
小林弘和と山田春奈によるクリエイティブユニット。SPREAD(=広げる)を目指し、環境・生物・時間・歴史・色・文字…あらゆる記憶を取り入れたグラフィックを中心にプロダクトやパッケージを幅広く手がける。主な仕事に「燕三条 工場の祭典」「萩原精肉店」など。ミラノフォリサローネ(イタリア)やバーゼル(スイス)にてLife Stripe展を開催する。
spread-web.jp

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