クリエイターのオフィスを訪ねると、よく見かける、大きな本棚。忙しい仕事の合間に、クリエイターたちはどんな本を読んで、どのように仕事に生かしているのか。第61回目はBACHに所属する山口博之さんが登場。自身の仕事や人生に影響を受けた本について聞いた。
『高山宏 表象の芸術工学』
高山宏著(工作舎)
本を選ぶ選書という仕事をしながら、活字の本を読み始めたのは、18歳、大学に入ったときから。マンガと片手で足りる程度の文庫本しか知らなかった僕は、大学の授業で教わる英米文学と平行して、ひとりいろいろな本の世界へとハマり込んでいきました。
高山宏を知ったのは、高山さんの盟友荒俣宏の本経由だったか、松岡正剛のだったか。ファッションのことにしか興味のなかった僕が、学問の世界でおもしろい!と素直に感じたのが表象論、視覚文化論でした。神戸芸術工科大学大学院での授業を書籍化した本書は、自分の大学で受けた高山先生の授業同様、大量のビジュアルコラージュ資料を傍らに独演会状態で語られたもの。ある秩序、文化の体系の中で並べられる辞書をデザインとして語り、インテリアと推理小説を鮮やかに結びつけ、詩と文学を視覚的に読み解く。いま思うとその手腕や手法は完璧に編集者のそれであり、地と図、絵と言葉、歴史の深みと文化の広がりなど、絡みあう事象から新しい世界がいくらでも見えてくることを教えてくれた1冊。