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「岩泉のつぶやきを一時停止して!」台風災害時の意外なネット貢献策

鶴野充茂(ビーンスター 代表取締役)

ブログや掲示板、ソーシャルメディアを起点とする炎上やトラブルへの対応について事例から学びます。

台風で大きな被害を受けた岩手県岩泉町。情報が交錯する中、ある漫画ファンによるTwitter上の呼びかけが注目された。それは、人気漫画「ハイキュー!!」に登場する「岩泉」というキャラクターに関するツイートの「自粛」だった。

8月末、台風10号で甚大な被害を生んだ岩手県岩泉町では、被害の調査や行方不明者の捜索活動などが続けられており、ネット上でも大勢の人が現地の情報を求めていた。そんな中で、あるTwitterユーザーが次のような呼びかけをした。

「お願い 台風10号の影響で岩手県岩泉町が大変な被害を受けています。Twitterは被災者にとって情報をえる重要な手段となっていますが、岩泉が含まれるキーワードではハイキュー岩泉選手の影響で検索がしづらい状況となっています。botなど運営されている方は一時停止をお願いいたします」。botとは自動投稿のアカウントである。

8月31日朝に発信されたこのツイートは9月初旬時点で1万8000回以上もリツイートされるなど大きな注目を集めた。この呼びかけに何か協力したい、などのコメントを発するユーザーが見られた。大きな反響を得た背景には、この漫画の作者が岩手県出身であり、岩泉町が作品ゆかりの地、つまり聖地だったという事情もあった。またこのユーザー自身が地元出身者で、以前から同作品の情報を発信してフォロワーの反応を得やすい関係があった。

情報のノイズカット

災害発生直後には、現地の最新事情を知りたいという大きなニーズが発生する。地名で検索するユーザーが一時的に急増し、今回のようにそのキーワードが他でもよく使われている場合、災害に関する情報とそうでない情報を選り分けて探さねばならなくなる。作品のファンにとっては大切なキーワードではあるものの、一刻も早く被災地の情報を知りたい人にとってはノイズになっていることがあるというわけだ。

そこでこうした被害の大きな地名などと同じキーワードを含む不要不急のツイートを自粛するというアイデアは、地味かもしれないが有効と言える。もちろん、情報を探す人が自分でフィルタをかけて検索をすることもできるし、呼びかけ自体が大きく拡散して、逆にむしろノイズとなるケースもあるが、考え方としては合理的だ。

有効性を高めるために

災害時に検索需要の急増するキーワードが、もしも自社商品やキャラクターの名称に含まれている場合には、キーワードのオーナーとして、ノイズ軽減のために特定キーワードを含むツイート自粛を呼びかけたり、縁があると考えて支援に動くことができれば、通常の場合よりも多くの人にメッセージを届けやすいだろう。広報部門などであれば日頃から関連キーワードでの検索結果を見ているだろうから、いざという時にも判断がしやすいはずだ。また同時に、被災地側から同じキーワードを持つ団体などにアプローチし、情報の共有や支援の呼びかけで協力を要請することも考えられる。

一刻一秒を争う状況では、いかに力を合わせるかが重要だ。日頃から、「縁のある」キーワードを持つ者同士でいざという時にどんな連携が取れるか検討しておきたい。

鶴野充茂(つるの・みつしげ)

国連機関、ソニーなどでPRを経験し独立。日本パブリックリレーションズ協会前理事。中小企業から国会まで幅広くPRとソーシャルメディア活用のプロジェクトに取り組む。著書は『エライ人の失敗と人気の動画で学ぶ頭のいい伝え方』(日経BP社)ほか35万部超のベストセラー『頭のいい説明「すぐできる」コツ』(三笠書房)など多数。公式サイトは http://tsuruno.net

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