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広報担当者のためのマーケティング発想入門

広報にも問われる事業への貢献「売上につながるPR」は可能か

片岡英彦(東京片岡英彦事務所 代表/企画家・コラムニスト・戦略PR事業)

いま、広報担当者にマーケティングの視点が求められています。今回は売上に対する広報効果の線引きとKPI設定について考えます。

多くの広報担当者にとって最も答えにくいであろう、ある「問い」がある。それは「広報で売上を立てることができるか?」という問いだ。広報担当者にとっては「永遠の課題」といっても過言ではない。「売上に直接つながるような広報はできないのか?」

私は広報・PR畑が長いが、この言葉を若いころから上司によく言われてきた。そして言われるたびに凹んできた。その原因はおおよそ、以下の3つの理由によるものである。

(1)企業の広報活動は「商品を売る」ためだけに行うわけではない
(2)「広報」はメディア露出が確実でない
(3)「メディアが取り上げない」ような商品・サービスを担当している

ではなぜ「凹む」のか。それぞれの根拠を以下にまとめていこう。

そのパブリシティはぺイドか?フリーか?

(1)企業の広報活動は「商品を売る」ためだけに行うわけではない

「商品を売る」ことを第一の目的とした販促活動や商品広告とは異なり、広報活動の領域は幅広い。「商品販売」とは直接関係のない広報業務も多い。

例えば「決算発表」「採用広報」「社内広報」、そのほか「CSRに関する広報活動」「業界団体や量販店(チャネル)などに向けた広報活動」なども業務のひとつだ。他にも「社長お気に入りのレストランを取材したい」という依頼がメディアからあれば、「売上につながる」かどうかは別にして対応しないといけない。日ごろのメディアとの付き合いをないがしろにしていると、万が一不祥事が発生した際のメディア対応にも関わる。

広報担当者の多くは、「商品を売る」ということは確かに会社にとって重要な課題だが、それが広報活動の「唯一」の仕事ではないという自覚を持っている。それにもかかわらず社長や社内から「広報で商品を売れ」と言われると、だったら「商品PR」に特化した業務内容にしてほしいと率直に思うものだ。

(2)「広報」はメディア露出が確実でない

仮に商品販促に特化したPR(マーケティングPR)業務を実施しようとすると、次に必ずと言って良いほど社内でぶち当たる壁がある。「ペイドパブリシティ」と「フリーパブリシティ」との境界線だ。一般的に「ペイドパブ」は販促部や宣伝部が出稿権限を持ち予算管理を行うことが多い。「ペイド(有料)」パブリシティといってもつまりは「広告」の出稿である。媒体社の営業、または広告会社の担当者が社内に来てくれることが多く、「広告」であるわけだから当然、掲載は担保される。

しかし同じ「商品PR」であっても「フリー(無料)」での掲載を前提とした活動の場合、話はまったく異なる。プレスリリースを書いて発信しても掲載につながることは通常はあまりない。媒体や番組ごとに切り口を変えた「企画書」のような提案を自らメディアに持ち込むなど提案(人によっては「営業」と呼ぶ)活動をしなくてはならない。担当者の数が足りない場合はPR会社に協力を依頼する。

企業の広報活動が「ペイド(パブリシティ)」を前提とするのか、「フリー(パブリシティ)」を前提とするか、またはその両者を並行して実施するのかによって「広報活動」の意味合いが大きく異なってくる。ところが、この点については経営者や他部門の方々はもとより、広報担当者の中でもあまり理解が進んでいない。

(3)「メディアが取り上げない」ような商品・サービスを担当している

 商品自体にインパクト(メディアにとっての情報価値)がある場合、例えば「見た目が面白い」「社会的意義がある」「画期的な新提案」「多くの人の生活に便利」……といった商品力(メディアにとって「ネタ」になる)があれば、仮にフリー(パブリシティ)であってもメディアが関心を持つので掲載につながり話題になりうる。露出量が獲得できるならば、ある程度の商品販売への貢献も予測がつく。

ところがたいていの場合、広報担当者が担当する商品やサービスはメディアが取り上げたいと思うモノではない。当たり前の話だが、メディアは「広告」(有料)であれば媒体で取り上げる。しかし「記事」(フリー)であれば、よっぽど報じる価値がない限りは特に取り上げたいと思わない。というのがごく普通の状況だ。

こんな状況で社長や他部門から「うちの広報はもっと売りにつながることをやってくれないと……」と言われると、多くの広報部門の担当者は図1のような不満を抱えがちである。とはいえ、社内ではそんなことは口には出せない。なので、広報担当者は「【売上】に直接つながるような広報はできないのか?」と言われると、まずは「凹む」のである。

図1 社内からのありがちな要望と広報担当者の嘆き

「広告換算で効果測定」というカラクリ

さて、そんな状況でもいつまでも「凹んで」ばかりはいられない。ここで話を元に戻す。「売上に直接つながるような広報はできないのか?」という問いに答えるためには …

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