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デザイン起点のクリエイティブディレクション

経営と表裏一体にあるもの

水野 学

「うちの会社には何が足りないと思いますか」水野学さんのもとには、企業からこうした相談が来るという。「何をやるべきか、わからないけれどデザインに可能性を感じている企業は多い」と水野さんは話す。

水野 学(みずの・まなぶ)
クリエイティブディレクター、good design company代表取締役、慶應義塾大学特別招聘准教授。1972年東京生まれ。ブランドづくりの根本からロゴ、商品企画、パッケージ、インテリアデザイン、コンサルティングまで、トータルにディレクションを行う。主な仕事に、NTTドコモ「iD」、「農林水産省」CI、熊本県キャラクター「くまモン」、「中川政七商店」、「久原本家」、ニトムズ「STALOGY」、VERY×ブリヂストンコラボ自転車「HYDEE」など。近著に『センスは知識からはじまる』(朝日新聞出版)。

デザインの力でよくなる企業は多い

ここ数年、僕の仕事は「ブランディングをしてください」「売上げを伸ばしてください」というような、明確なオーダーのないコンサルティング的案件が増えています。ある程度はブランディングも完成している、売上げもそこそこ達成している、だけどうちの会社には何かが足りない。「何が足りないと思いますか」という問いかけをいただくことが増えているんです。いいプロダクトはできあがっている、経営もうまくいっている、でもまだ何かうちの会社に伸びしろがあるとしたら、それはデザインではないか――。そう考える企業が増えています。一時期のように、著名なデザイナーに頼めばなんとかなる、と考えるのではなく、デザインで何かできそうだけれど、でも何をやったらいいかわからない、だから相談したい、という。ひとくちにデザインといっても、企業の業種や業態によって、その相談内容と最終的なアウトプットは全く異なるわけで、必ずしも“デザイン”という形ではないこともあるんです。

企業にとって僕のような存在は医者や整体師のようなもの。いろいろなところをほぐしていったら、思わぬところがほぐされてしまった――。ある企業のトップは、「こんなことを相談する場になるとは思わなかった」とおっしゃられていました。僕がこれまでいろいろな企業の方とお話をさせていただく中で強く感じているのは、デザインを変える、デザインを意識するようになるだけで、もっとよくなる企業はたくさんある、ということです。

全体を変えるのではなく、ツボを突く

デザインの力を感じていただけた一つとして、興和さんの繊維事業部との仕事があります。興和さんはさまざまな事業を展開している企業で …

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