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デザイン起点のクリエイティブディレクション

自分たちが本当に面白いと思えるモノづくりをする

木谷友亮

Web、グラフィックの領域を行き来し、独自の立ち位置でアートディレクションをする木谷友亮さん率いるカイブツ。その方針は、「特技だけ伸ばせ、短所は捨てろ」である。

木谷友亮(きたに・ゆうすけ)
1976年千葉県生まれ。日本デザイン専門学校卒業後、グラフィック広告の制作プロダクションに入社。電通インタラクティブ・コミュニケーション局(IC局)への出向を経て、2005年独立。06年カイブツを設立。これまでの主な仕事に、「進撃の巨人展」グラフィック・Web、OKGo「I won't let you down」Web、本田技研工業「Matryosh-CAR」、エルメス「ふしぎな写真館」など。

短所は捨てて、特技を伸ばせ

Web関連の仕事が多いこともあり、Web制作会社のように見られがちですが、カイブツにはプログラマーやフラッシャーはいません。仕事に応じて、外部スタッフにお願いしています。僕はグラフィック出身ですが、10年以上前にたまたま電通インタラクティブ・コミュニケーション局(IC局)に出向させていただいたことがきっかけで、Web周りの仕事をするようになりました。当時はWeb広告の黎明期。予算も少なかったので、撮影も、切り抜きも全部自分でやる。手弁当で自分たちでつくり続けるしかなかったんです。

それでそういう体質になってしまったのか、いまでも依頼を受けた仕事は、まず自分たちの手でやってみることにしています。昨年、47都道府県で展開した「ONE PEACE」の新聞広告も3カ月かけて、すべて自分たちで合成しました。「進撃の巨人展」のポスターも、あのエッチングのようなタッチは、デザイナーの石井正信が2カ月間描き続けて完成したものです。ずっと寝なければなんとかなる、いつもそんな感じで仕事をしてしまう。僕がそういうやり方をしてきたこともありますが、時間をかけてよくなるものであるなら、できるだけ時間をかけたい。例え低予算のものでも、やってよくなるならギリギリまで手をかけたい。前回、この痛みに耐え抜くことができたから、次はもう一段階上の痛みにも耐えられるかもしれない…。そうやって無茶ぶりに応えてしまうから、そういう仕事はカイブツに、となってしまったのかもしれませんが。

カイブツの方針は、「特技を伸ばせ、短所は捨てろ」。IC局に出向していたとき、Flashを勉強しようと思った僕の隣にいたのは、中村洋基くん(現PARTY)とMarcos Weskampというふたりの天才的なFlasher。これはもう、へたに自分がやる必要はない、得意なことは得意な人がやればいい――。そのとき、そう決めました。得意なところだけを伸ばしていけば …

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