IDEA AND CREATIVITY
クリエイティブの専門メディア

           

デザインプロジェクトの現在

青山に登場したレクサスの新しいブランディングスペース「INTERSECT BY LEXUS - TOKYO」

文・川島蓉子

東京 表参道に8月30日、「INTERSECT BYLEXUS-TOKYO」がオープンした。これからのレクサスを表現する場のひとつだという。空間デザインを手がけたワンダーウォール 片山正通さんに話を聞いた。

01 「INTERSECT BY LEXUS-TOKYO」外観。レクサスのスピンドルグリルをかたどった組み木が1~2階部分を彩る。

02 1階は「街一番のコーヒー」をコンセプトにしたコーヒースタンド。奥がガレージスペース。

03 2階のライブラリーラウンジ。インターセクトのフードメニューはフードディレクターの田島大地さんが、カフェメニューはコーヒーバーのFUGLENがそれぞれ監修。テーブルウェアは雑貨ブランドSyuRoの宇南山加子さん、音楽はTOWA TEI さん、香りはアロマブランドのyuicaがそれぞれプロデュースした。

“ブティックギャラリー”という新しい概念

話を耳にしたとき、ブランドの“アンテナショップ”のようなものを想像し、ちょっとネガティブなイメージを抱いた。場所も空間もやたらかっこいいのに内容が見えない、やりたいことが伝わってこないーークルマや家電などのメーカー企業が、消費者向けに作ったスペースがおちいりがちなところにレクサスも寄ってしまうのかと、不安になったのである。

オープニングで訪れ、片山正通さんの話を聞いて、それが徐々に覆っていった。「“ブティックギャラリー”とでも言える新しい概念を表現したかった」。クルマだけにとらわれない、ライフスタイルを提案する場として「INTERSECT BY LEXUSTOKYO(以下インターセクト)」を作ったという。

ただ、この言葉にも危険な気配がある。クルマメーカーがライフスタイルを提案するというと、あり得ないスタイリッシュさや、クルマ好きだけがわかるマニアックさがつきまといがちだからーーいぶかしがりながら空間に身を置いて、思い込みだったと安心した。片山さんは「レクサスがレクサスを知ってほしいという感覚。レクサスが大好きというオーナーが集まって勝手に作ったサロンをイメージした」という。

だからなのだろう。クルマが中心にはあるものの、取ってつけたようなライフスタイルは少なく、クルマ好きの男が持つ魅力的なエッセンスがのぞいている。やんちゃさや、不良さ、艶っぽさ、粋な雰囲気など、日本の旦那衆が持っていたような気質を、いまという時代、青山という場で翻訳し直した感じがする。ちょっと褒めすぎかもしれないが、そんな印象を抱いた。

「色気をつけたライフスタイルを作りたい」という片山さんの思いが散りばめられた「インターセクト」には、さまざまなモノやコトが揃っていて、眺めたり、選んだり、買ったり、おしゃべりしたり。ちょっと非日常的な時空間を、ワクワクして過ごすーーブティックギャラリーというフレーズも腑に落ちる。ただ、色気のある男の世界に、女の姿がもう少し加わると、さらに魅力が増すと思った。

04 1階から2階に向かう階段の脇の壁は、白く塗装されたクルマのパーツが美しく散りばめられている。
05 2Fにあるトイレでは、子どもたちのクルマへの夢や憧れを象徴する存在、ミニカーを天井に敷きつめた。

まずは豊田社長と話し込んだ

レクサスから片山さんに声がかかったのは1年ほど前のことで、場所探しから始めた。「銀座という選択肢もあったが、訪れている人、歩いている人の雰囲気から、青山という場がふさわしいと思った。知り合いのデベロッパーからいまの場所が空くと聞いて決めた」という。表参道の交差点を根津美術館に向かった通りの左側、ヨックモックの向かいの一等地だ。門構えはコンパクトで、おおげさでない造りが好印象につながっている。

プロジェクトの最初の段階で、片山さんは豊田章男社長と会って話し込んだ。「『僕をもっと知ってほしい』と言われたのは嬉しかった。ブランドの根っこのところを僕自身が体感することが大事だから」(片山さん)。トヨタ自動車の創業時の話も含め、レクサスに賭した豊田社長の思いを存分に聞いた。「『ミスターレクサス』は僕にしてほしい」と言われ、ブランドに対する覚悟の大きさを、しっかり受けとめた。「ブランディングスペースを手がけたのは初めてのこと。難しい仕事だったが、まず僕自身が強烈に楽しくないと伝わらない」と片山さん。

あと36%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

デザインプロジェクトの現在の記事一覧

デザインプロジェクトの現在の記事一覧をみる

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
ブレーンTopへ戻る