「複雑系理論」を基にした経済理論の研究で大きな功績をあげた西村和雄氏。国の経済を支える人的資本の質を高めるために取り組む教育改革の様子について、また人と広告の関係性について感じることを聞いた。
複雑なシステムの背後にあるメカニズムの解明で経済学に貢献
『Q&A1分間経済学(日本経済新聞社)』『経済学思考が身につく100の法則(ダイヤモンド社)』などの著書を出版し、日常生活に役立つ“経済学的思考”をわかりやすく解説する西村和雄氏。「数理経済学」「複雑系経済学」を専門に、マクロ経済動学の数学的理論の研究を国際的にリードしてきた。現在は神戸大学計算社会科学研究センターにて特命教授を務める傍ら、大阪市教育委員会顧問として、教育改革に取り組んでいる。
高校卒業後の1966年、東京大学に理系として入学した西村氏。当時、フランスの数学者ルネ・トム氏が提唱した「カタストロフィー理論」が流行し、西村氏も影響を受けた。この理論は、例えば青虫が蝶へと劇的に変態を遂げるプロセスを解明しようとするようなもので、「大変動」「破局」という意味を持つ「カタストロフィー」の由来から、あらゆる領域において突然の破壊・崩壊が起こるプロセスなどを研究する学へも発展。そうした背景から、数学が社会現象をも説明できるというような雰囲気があったという。
西村氏は主に複雑系理論に基づき経済変動の仕組みを解き明かした。数多くの要素で構成され、それぞれが互いに絡み合う「複雑系」と呼ばれるシステム。人間の脳や生態系、経済のほか、人間社会そのものが「複雑系」として挙げられる。そこから起きる現象は、非常に...