小学3年生をメインターゲットに企画・制作されたダイヤモンド社の学習参考書『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』。シリーズ累計68万部を超えるヒットを支えたのは、実はシニア層だったという。小学生向けの学習参考書がシニアに響いたのはなぜか。ダイヤモンド社 担当編集者の吉田瑞希氏に話を聞いた。

小学生向けの参考書 蓋を開ければシニアが3割
2022年に発行されたプロ算数講師である小杉拓也さんが企画した学習参考書『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』は累計発行部数61万を超え、2023年11月に発行した続編を合わせるとシリーズ累計68万部を超えるヒット作となった。
本シリーズはタイトルの通り、小学生をターゲットにしたものだが、そのヒットを支えたのはシニア層だ。ダイヤモンド社でシリーズの編集を担当した吉田瑞希氏によると、売上の3割以上がシニアによるものだという。
制作の過程で小学生だけではなく、シニア層にも受け入れられるように意識したわけではない。むしろ徹底的に小学生のニーズに向き合ってつくられた書籍だった。吉田氏の親戚をはじめ、実際に小学生に対するヒアリングも行い、参考書らしさよりも「楽しそう」「やってみよう」と思われることを目指した。
それゆえ表紙デザインは、社内で“飛び道具”と評されることもあったという。しかし吉田氏は、「書店の参考書コーナーを見ていると、勉強しないといけないプレッシャーを感じて、身構えてしまう印象を受けました。そうした圧を感じないデザインを意識しました」と話す。
結果的にこうした店頭での見つけやすさが、シニア向けにも効果を発揮した。
シニア層の不安を「自己肯定感」が解消
しかし、シニアが購入しているとはいえど、自分用とは限らない。孫のための代理購買の可能性も考えられる。「私も最初は孫のために購入されている方が多いかと思っていましたが、感想の電話や読者ハガキの内容を見ていると、最初から自分用に買っているようで、そこは意外な発見でした」(吉田氏)。