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AI×マーケティングで未来を拓く

データサイエンスとジョブ理論を活用したマーケティング手法への道

山根宏彰氏

生成AIの台頭により、業務の効率化が実現するとともに、メディアの在り方や、企業と生活者の接点のつくりかたをも変えるような大きなインパクトが予測されます。ではマーケターは、これらの技術をどのように受け入れ、業務に生かしていけばよいのでしょうか。月刊『宣伝会議』のコラム「脳科学の視点」で連載を続けてきた、富士通の山根宏彰氏が解説します。

ジョブ理論を活用し破壊的イノベーションを生み出す

イノベーションのジレンマ、をご存知だろうか?

クレイトン・クリステンセンの著書『イノベーションのジレンマ』は、成功を収めている企業が新技術や市場変化に対応しきれず、挑戦することが難しくなる現象を指す。これは、現行のビジネスモデルや製品に固執し、その短期的成功に安住してしまうことにより引き起こされる。

「破壊的イノベーション」とは、新しい技術やアイデアが市場に現れ、従来の製品やサービスを駆逐し、市場構造そのものを塗り替える現象である。iPhoneを始めとしたスマートフォンが登場し、従来の携帯電話市場(欧米ではノキア、国内ではいわゆるガラケー)を一掃した例が挙げられる。

成熟した企業は、しばしば現在の延長線にある製品に資源を集中し、破壊的イノベーションを見過ごしてしまう。あるいは、現行ビジネスの存続に固執し、変革に二の足を踏んでしまう。イノベーションのジレンマを克服するには、新しい技術や市場動向にアンテナを張り、絶えず革新を追求する姿勢が不可欠である。

この問題を解決するポテンシャルを持つのが「ジョブ理論(Jobs to be done:以下JTBD)」だ。これは、イノベーションのジレンマと同じく、クレイトン・クリステンセンによって後に提唱されたもうひとつの重要な概念である。イノベーションのジレンマが企業の挑戦を分析する一方で、JTBDは顧客の視点を重視する。

ジョブ理論とは、消費者が製品やサービスを「雇う」理由を深く理解するためのフレームワークである。この理論では、消費者が何かを購入するとき、それは特定の「仕事」を達成するためだと定義している。ここで言う「仕事」とは、具体的なタスクだけでなく、消費者が持つ意識的、無意識的に関わらない「感情的なニーズ」や「社会的な期待」も含まれる。

図に示す例は、ファブリーズが何のために「雇用される」のかを調べたときに、P&Gの調査人たちは「部屋が臭いと感じ、悪臭を消したい」人でなく、部屋を掃除している人に、掃除の完了に対する報酬を与えるものとして、使われることに気づいた。

クリステンセンは、企業がイノベーションを成功させるためには、単に技術的な進歩に目を向けるだけではなく、顧客が何を求め、どのような「仕事」を達成しようとしているのかを理解することが不可欠だと主張する…

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