スポーツやカーニバルといった世界各地のシーンで、人々の「躍動感」を写真で表現しているフォトグラファー・南しずか氏。一瞬をとらえた写真からその背後にある個々のストーリーを発信する南氏に、コミュニケーションに対する考えを聞いた。

南しずか(みなみ・しずか)さん
1979年東京生まれ。東海大学工学部航空宇宙学科卒。大学卒業後に渡米し、「International Center of Photography(国際写真センター/The ICP School:フォトジャーナリズム及びドキュメンタリー写真1カ年プログラム)」卒。ニューヨークを拠点にフリーランスフォトグラファーとして活動中。主に「米女子ゴルフ」「変わったスポーツ」「カーニバル」などを撮影。米国スポーツ雑誌「スポーツ・イラストレイテッド」をはじめとして、ゴルフ雑誌「ワッグル」「週刊ゴルフダイジェスト」「GDO」などでも活躍。
先の予測ができない現場で 一瞬の表情や動作をとらえる
世界各国を駆け巡り、第一線で活躍するアスリートや世界のお祭りを撮影しているフォトグラファーの南しずか氏。勝負の場に漂う張り詰めた空気感、試合に対してまっすぐに向き合うアスリートの偽りのない表情、興奮と熱狂が渦巻くカーニバル。そこから生まれる人間の躍動感を切り取ることに情熱を注いでいる。
「スポーツの試合中の“何が起こるかわからない”というドキドキ感や、カーニバルの“とにかく楽しくてしょうがない”という、当事者から溢れ出る感情や動作を切り取ることが好きです。撮影時は、こんなビジュアルが撮れるだろうと、事前にある程度想定して臨みますが、いざその時になってみると思ってもみなかったドラマに出会えたりして。そんな意外性のあるところが、自分にとっての写真の魅力ですね」と南氏は話す。
今までに特に印象的だったシーンとして、プロゴルファーの渋野日向子選手が2019年にAIG全英女子オープンで優勝を果たした時を挙げた。
「渋野選手にとって同大会が初めての海外メジャー。まだ名が知られていなくて、どんなプレーをするのかなど、ほとんど情報がありませんでした。しかし、プレーはもちろんのこと渋野選手の人懐っこい笑顔や、試合の合間に見せる仕草に観客、メディア、ボランティアなどその場にいる人々は徐々に魅了され、最終18番でウイニングパットを決めた瞬間にはギャラリーから大歓声が沸き起こりました。それに応える渋野選手の感極まった表情は、いまでも記憶に残っています。42年ぶりに日本勢がメジャー制覇したという歴史的瞬間を記録することはもちろんのこと、同伴者や観客とハグや握手を交わすなど渋野選手らしい一面を撮り逃さないよう集中していました」と南氏は振り返る。

大学卒業後、プロのカメラマンを目指して入学したニューヨークの国際写真センターで、ドキュメンタリー写真とフォトジャーナリズムを学んだ南氏。撮影した写真を自身で日々メディアに持ち込み、仕事のチャンスを獲得していった。
オン・オフの切り替えを徹底し アスリートとの信頼関係を築く
現在、南氏の活動は写真の撮影にとどまらず、取材・執筆もこなし、スポーツ総合雑誌『Sports Graphic Number』など、複数のメディアにコラムの寄稿も行っている。アスリートにフォーカスをあてる企画では、試合だけではなく、トレーニングの様子や私生活への密着など、長期取材をする場合もある。その際のアスリートとのコミュニケーションについて...