1972年に誕生したスギヨの「カニカマ」は2022年に50周年を迎えた。世界で初めてカニカマを開発したのが、スギヨであった。
開発のきっかけは「人工クラゲ開発の失敗」。1960年代後半、日本では中国からクラゲを輸入していたが、国交の悪化により輸入がストップ。業界ではクラゲの代替品が求められていた。当時、スギヨでは「かまぼこ」や「ちくわ」、カラスミの風味を再現した「からすみ」といった製品を製造・販売していた。その技術力を活用しクラゲの代替品をつくれないかと開発をスタート。しかし、人工クラゲの製造は開発の最終段階で行き詰まった。
そんな時、失敗作の人工クラゲを刻んで食べてみたところ、食感が“カニの身”に似ていたことから、“人工クラゲ”から“人工カニ肉”開発へと方向転換。本業である“かまぼこ”製造の技術を生かし、“カニ風味のかまぼこ”をつくるという着想を得て、初代カニカマである「かにあし」は誕生した。
実際のカニより手軽な価格で“カニ風味”を楽しめると話題になった「かにあし」だが、一方で消費者からは「本物のカニだと思った」などの抗議の声も。そこでスギヨは公正取引委員会と約20年かけてパッケージの表示基準などを策定。1987年には水産煉製品の項目に「風味かまぼこ」として統計されるように。そして一般認知が進んだことから2009年にはついに「風味かまぼこ」が品質表示基準から廃止となった。
同社では海外にもカニカマを広めるべく、1977年にユナイテッド航空の機内食用にカニカマを提供するといったテストマーケティングも実施。現在では、アメリカでスポーツ観戦時のおともになるなど、カニカマは現地の文化に根付いている。50年間業界を牽引し続けてきたスギヨ。今後も商品の改良・改善を続け、新たな価値を生み出していく。
視点01 商品・ラインナップ
“本物のカニ”を追求し続けた商品展開
1972年に「かにあし」として誕生したカニカマブランドは、東京・築地で販売をスタートし、全国へ広がっていった。他社もカニカマの製造に参入する中で、同社はその後も商品の改良を継続。1975年には、フレーク状に刻まれた“かまぼこ”を魚肉すり身でカニ脚状に結着させた「ゴールデンかにあし」を発売。
市場にスティックタイプのカニカマが増えてきたことを受けて、さらに“本物のカニ”のような風味・食感を追求。1990年には葉脈状になっているカニ脚の筋肉の繊維を再現した「ロイヤルカリブ」を発売。「ロイヤルカリブ」は業界では「これ以上のカニカマはないだろう」と言われるほどの品質であり、当時は一部の小売店で...