エリアマーケティングという概念は、1970年代後半に誕生した。全国をひとつの市場として捉えるのではなく、地域住民の生活様式や環境、産業、交通インフラなどの特性を把握し、エリアに特化した仕組みをつくる手法だ。そのエリアを拠点とする地元企業だけではなく、全国市場を対象にした企業にとっても、エリアごとに最適な戦略をとることが求められている。
著者の吉川勝広教授は、流通システムとマーケティング戦略を専門としている。これまで企業や自治体と連携したプロジェクトに携わりながら、まちづくりやブランドづくりの研究を行ってきた。吉川教授は執筆の背景について次のように話す。「各地域には、それぞれの特性を活かしたマーケティングを展開している企業や自治体があります。そこには、首都圏以外のエリアだからこそできるマーケティングがあるのではないか。その特性に関して、地域ブランド、製販連携、観光の視点から分析していきたいと考えました」。
本書の前提にあるのは、スマートフォンの普及とECの発展が、地方の小売やメーカー、観光に深い影響を及ぼしていること。それぞれの地域に根差した資源、そして流通の仕組みに着目し、具体的な...
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