競争戦略とは、「企業が競争市場内において全体的姿勢を明確にし、最大の投資リターンを目指して競争優位な地位に経営資源を投入し、展開する方法と方向の決定」(嶋口 1986)と定義される。産業組織論では、競争がないと企業は「儲けすぎ」となり、それは望ましくないといわれるが、競争戦略の祖であるマイケル・ポーターは、その考え方を逆手にとった。どうすれば企業は高い収益性を得られるのかを示した『競争の戦略』(1980)のフレームワークは、今日でも活用されている。
多くの企業が同じ分野に参入し、レッド・オーシャン化が起こるとどうなるか。必要以上な価格競争は利益率の低下を生み、組織は疲弊し続けていく。本書「競争しない競争戦略」では、いかにして競争せず、自社の独自性を貫くか。リーダー企業と競争しない戦略を、『ニッチ戦略』『不協和戦略』『協調戦略』の3つに分け、85社の企業事例を交え解説する。
著者は、競争戦略論を専門とする早稲田大学ビジネススクールの山田英夫教授。2015年出版の初版本から掲載事例を半数以上差し替え、内容もアップデートした本書。新型コロナウイルス感染症の影響はもとより、DXなどの技術の変化や...
あと61%