形容詞の少なさから生まれた「はまい」「レモい」のインパクト
最近、耳慣れない形容詞を使ったCMを立て続けに目にした。国語学者としては見逃せないので、取り上げておきたい。
ひとつは、回転寿司チェーン「はま寿司」のCMで、川口春奈がうっとりした顔ではま寿司の大トロやウニのおすしをほおばり、「はまい!」とつぶやくやつ。もうひとつは、「アサヒ ザ・レモンクラフト」のCMで、新木優子が製品を一口飲んで「超、レモい!」と訴えるやつである。
「はまい」も「レモい」も、国語辞典には載っていないが、日本語の母語話者ならこれらの語が形容詞であることは直感的に分かる。それは語幹「はま」「レモ」に活用語尾の「い」が付いていることと、アクセント型が「うまい」「たかい」のような既存の形容詞と同じ、中高になっているからである(太字の部分を高く発音してください)。
どうしてこれらの語がCMとして成立しているかというと、日本語の形容詞がもともと少ないために、新しい形容詞を創り出すと、目新しさがインパクトとなって感じられるからである。
日本語の形容詞の少なさは、英語と比べると一目瞭然で、『オックスフォード英語辞典』では収録語彙の約4分の1が形容詞であるのに対し、『精選国語辞典』では総見出し語の1.24%に留まる※1。そんなに形容詞が少なくてもあまり不便を感じないのは、日本語には...
あと60%