編集者視点で考えるメディアの未来─グーテンベルクオーケストラ 菅付雅信氏
メディアビジネスの未来はどうなるのか?との問いに、「イノベーティヴな答えを期待するのはやめたほうがいい」と語る菅付雅信氏。多くのメディアのイノベーションが誕生時はビジネスを目的に発明されたものではないからだという。それでは「メディアの未来はどうなるのか?」。“編集者”としてメディアビジネスの域を超えて活動する、同氏が考えるメディアの行く末とは。
テクノロジーの進化に伴い、「広告の効果はわからない」という通説が覆されようとしている。コロナ禍において広告予算の削減を余儀なくされる企業も多いなか、これまで以上に投資効率の高いプランニングが求められている。テレビCMの効率的な活用で売上高を7億円から210億円へ伸ばしたラクスルの小林氏がその実践について解説する。
ここ数年、「宣伝部」や「広報部」といった部署名を耳にする機会が減った。例えばライオンのそれは「CX(カスタマー・エクスペリエンス)プランニング室」、サントリー食品インターナショナルなら「コミュニケーションデザイン部」などに改名され、より顧客目線に立ったコンテンツマーケティングを意識する企業が年々増えている。
同時に宣伝・広告活動そのものが、企業の立場から自社のプロダクトやサービスを“一方向的に推す”ものではなく、顧客を見据えて“コミュニケーションを取る”ものへと、価値観が変化してきた。単に“伝える”だけでなく、市場の動向や販売戦略などを踏まえた戦略的な思考を求められるようになったことから、「宣伝担当」「広報担当」と切り離された役割を担うだけでなく、皆が「マーケター」としての視点を求められるようになったとも言えるのではないだろうか。
そうした中、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、企業のマーケターを取り巻く環境にも大きな変化が起きた。具体的に挙げるなら、①売上低下、マーケティング予算削減による、投資対効果への意識の高まり/②オンオフ統合、メディアミックス需要の高まり/③DXによるデータドリブンな事業改革の推進の3点だろう。
コロナ禍において企業で課題となった2大予算といえば、人件費とマーケティング(宣伝・広告)費だろう。感染症収束の見通しが立たない中、その予算をいち早く削減した企業は少なくない。しかし売上目標が削減されるわけではなく、むしろ少ない予算でいかに効率よく効果を出すかが、強く問われるようになった。
同時に、リモートワークなどが増えて生活様式が一変し、人々のメディアへの接触率が増加したこともマーケティング戦略を立てる上で大きな変化となっている。2019年にはデジタル広告費がテレビ広告費を抜いたことも話題になったが、在宅時間の増加は人々がテレビに接触する頻度を上げ、テレビCMに対する企業の関心も再燃しつつある。
加えて企業のDXが急速に進み、ビジネスアナリティクスに対する意識も変わってきた。ただデータを集めるだけでなく、それをいかに管理・分析し、アクションを起こすか。少ない予算で効果を出すためにはデータを活用して効率を上げるしかないと、皆が気づき始めているのだ。
しかし、いくら「データドリブンな...