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広告プランニングの新・潮流 「新・メディアの教科書」

『消耗』より普遍的価値のあるコンテンツ制作を─中央大学 松野良一氏

松野良一氏(中央大学)

この不確かな時代、消費者はどのようにメディアに接しているのだろうか。それに対して、企業に求められる発信のあり方とは何か。中央大学の松野良一教授に、話を聞いた。

「ニッチ」か、「博学」か 大学生のメディア接触に変化

私は今、中央大学の複数のゼミで、ドキュメンタリー番組を制作する指導を行っています。そこで、学生のメディア接触状況が激変していることに気づきました。今年の新入生で地方から上京してきた約20名に聞いたところ、実家からテレビを持ってきた人はたった5人。新しく購入した人は、なんとひとりもいない。もはや、一人暮らしで買いそろえる電化製品の中に、テレビは含まれなくなっているようなのです。

「テレビは面白くない」。そう話す彼らがインターネット上の動画に求めているのは、「テレビにはないもの」だといいます。とはいえ、これは“地上波では放送できない”過激な方向性だけではありません。

彼らがよく観ているものを聞いたところ、ひとつが近所を散歩したり、釣りをしたりといった、ある場所や趣味に特化した非常にニッチな動画。もうひとつが、池上彰氏やオリエンタルラジオの中田敦彦氏が配信しているような、いわゆる“教育系”の解説番組。ビジネス書の解説や、授業で学ぶ内容の入門編として、それらの動画を観る。ある種、動画を百科事典的に活用しているようです。

また学生たちに話を聞くと、試験や就活の合間に「泣ける CM」と検索し、逆境から立ち上がるようなストーリーが描かれたテレビCMを見て、自分を奮い立たせることがよくあるのだそうです。同時に、そのブランドや企業に対するイメージも大幅に高まっているようなのです。

誰もがアクセスできる媒体 求められるのはアーカイブ性

私の授業では2004年から「多摩探検隊」「にっぽん列島おもしろ探検隊」というタイトルのドキュメンタリー番組を制作し、ケーブルテレビで放送してきました。2010年からは制作した番組をYouTubeでも配信。ネットでの配信を始めて約10年経ちますが、この数カ月、非常に興味深い傾向がでてきました。

ひとつがコンテンツの再生回数の急激な伸長です。いま最も再生数が多いのが、10年前に投稿した『青梅に住む若き刀匠』という動画で現在、再生回数は約60万。他にも、次々と10万超の動画が出てきました。これらは、ジワジワと伸びたのではなく、この1年で急激に再生回数が増加したのです。チャンネル登録数も、昨年は約3000人だったものが今年4月には7000人を超えました。今も着々と伸長しています。

また、Web上で視聴される動画コンテンツは短いものが好まれるとされていますが...

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