ルーティンワークから解放され自分にしかできない仕事に集中
第3次人工知能ブームとしてAIに注目が集まる中、人間の仕事が奪われるのではないかという危機感をあおる論調もある。
こうした危機感の背景には、AIが企業の生産性を高める目的で導入されていることが多いからではないか。個人のメリットや意思を尊重したAI活用を考えれば、新しい価値観が生み出されるのでは…。
こうした思想をもって、パーソナル人工知能(P.A.I.:Personal Artificial Intelligence)の開発をしているのがオルツだ。
代表取締役の米倉千貴氏は「オルツという社名は、代替を意味するオルタナティブから付けたもの。社名が表すように、当社はデジタルクローンP.A.I.を開発する会社で、技術的には自然言語処理と音声合成の領域に強みを持っている。これらの技術を用いて、人が自分にしかできない作業に集中する環境をつくるため、デジタル上に自分のクローンAIをつくり、メールのやり取りや、スケジュール管理などの作業を代替させる世界づくりに取り組んでいる」と話す。
創業は2014年11月。大学在学中から企業経営に参画してきた経験を持つ米倉氏にとって、オルツは4社目の会社だ。「オルツの創業前は、電子書籍の企画・販売をする会社を経営していた。社長として採用面接を繰り返すうち、質問も回答もパターンがあることに気が付き、そのようなルーティーン作業から解放され、自分にしかできない仕事に集中する環境をつくれないかと考えるようになった」とP.A.I.構想に至るきっかけを説明する。この気づきから当時、経営していた会社を売却し、オルツを立ち上げることになった。
創業以来、オルツは「EY Innovative Startup 2017」、「ACL 2017」、「COLING 2018」、「J-Startup」、「ILS TOP100 Startups」など数々の国際会議に参加したり、スタートアップとして表彰を受けるなど、国内外でその技術力を認められてきた。こうした技術力を支えるのが国内外の専門家の存在で、設立当初から産学連携を図り、東京大学、国立情報学研究所、数理先端技術研究所などから専門家が顧問として参画したり、共同研究を行うなど「研究と開発を両輪で行う会社」として取り組みを続けている …