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ロングセラーブランドのコミュニケーション戦略

「変わらない」ことを選択し独自路線を貫いた「タカラcanチューハイ」の35年

宝酒造 タカラcanチューハイ

(左)1984 (右)2019

宝酒造が販売する、シルバーの缶に黄色のタイポグラフィのシンプルなパッケージでお馴染みの「タカラcanチューハイ」が2019年に35周年を迎えた。「焼酎ハイボール」を語源とするチューハイは、1950年代初めに東京下町で生まれたと言われている。米国など世界的に無色透明のお酒に人気が集まる流れがあり、日本でも1977年の宝焼酎「純」の発売をきっかけに甲類焼酎が販売量を大きく伸ばしていた。

同社の親会社である宝ホールディングス広報課の白川愛美氏は「同じころ首都圏を中心に居酒屋チェーン店が増え、戦後庶民の酒として親しまれていた焼酎を果汁や炭酸などで割って飲む『チューハイ』という飲み方が、おしゃれでライトな酒として若者たちの間で爆発的なブームとなったことが開発の契機となりました」と語る。

当時、宝酒造には缶製品の製造ラインがなく、ラインを新設する設備投資には懸念の声もあがった。しかしチューハイという飲み物の新しさや手軽さを表現するために、缶入りの製品として発売する決断を下す。多くの試作を繰り返し、1984年1月に日本初の缶入りチューハイが誕生。発売から順調に販売数を伸ばしていた同商品が転換期を迎えたのが、2000年頃にビールメーカーによるチューハイ市場への参入が起きた時だった。

スウィート系チューハイが主流であったなか、同社はあえて高アルコールで甘くない"辛口"という独自路線を貫く。「当社はあくまでも焼酎メーカーで、焼酎のおいしさが最大の強みです。約85種類・約2万樽にもおよぶ樽で貯蔵・熟成させた樽貯蔵熟成酒を保有し、本商品には11種類の樽貯蔵熟成酒を使用しています」。焼酎メーカーだからこそ実現したチューハイが、他社との差異化を果たし、熱狂的な支持を集めてきた。変わらず焼酎の味にこだわり続けたことが、35年間も愛される最大の要因といえるだろう。

視点01 商品展開
焼酎のおいしさを再認識できる商品を展開

「当社は『タカラcanチューハイ』で缶入りチューハイという新市場を創造しましたが、焼酎メーカーとして蓄積してきたノウハウを最大限生かしながら新しいチャレンジをしていく姿勢は、その後の商品開発にも受け継がれています」(白川氏) …

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