経営そしてマーケティングにおけるデータ活用の重要性が叫ばれるようになって以来、専門人材の採用、育成に力を入れる企業が増えています。しかしスキルを持った人材がいれば企業のデータ活用は進むのでしょうか。データ活用ができない組織には共通点があると指摘する、統計家の西内啓氏が、陥りやすい落とし穴をもとに実践的なデータ活用論を解説します。
「変える」と「ずらす」がデータ活用のポイント
今回で全6回の連載も最終回です。ここまでの回で皆さんは、データ分析の結果を活かして、どのようなアクションを取るべきかが重要であるという話も、機械学習技術を活かしてどのようなAIをつくるべきか、という話も学んできました。
まず、データ分析のポイントは「変える」か「ずらす」かです。データ分析からこれまで気づいていなかった、「こういう商品が売れる」「こういう顧客はよく購入してくれる」「こういう広告は響く」という傾向が見つかったとしましょう。この場合、とにかくデータが指し示す方向に、商品やターゲット顧客、広告を今から変えることができないか、と検討するのがひとつの考え方です。
同じ商品でもどのような魅力をアピールするかで顧客の受け止め方は変わってきますし、顧客の購買パターンを変えることに成功すれば、その後、ライフタムバリューが大きく拡大するかもしれません。
検討の結果、今ある商品や顧客ターゲットを変えることはできなかったとしても、「仕入れに占める、"そうした商品"の割合を高める」あるいは「これから接触しようとする顧客の中でも、"そうした顧客"の割合が高まるようなプランをつくる」というのが「ずらす」という考え方です。
例えば、自分たちが売りたい商品を支持してくれている重要顧客像が分かったらそうした顧客がよく見ているであろうメディアや、よく買い物をしているであろう販路を抑えることで、効率的なマーケティングに繋げることができるでしょう。
データが与える示唆を現実に形にできるか?
また、本連載ではデータ解析を語る上で欠かせないAIの活用についても触れました。良いAIをつくれば様々な人間のタスクを自動化あるいは省力化することができます。特に、「多くの人が長い時間、不快な思いをしている」という総負荷量が高い課題を自動的に処理してくれるAIができれば多くの人が助かり、大きなビジネスになることでしょう …