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データを活用のできる組織になる!

「変える」か「ずらす」か? 正しいデータ分析結果の生かし方

西内 啓氏

経営そしてマーケティングにおけるデータ活用の重要性が叫ばれるようになって以来、専門人材の採用、育成に力を入れる企業が増えています。しかしスキルを持った人材がいれば企業のデータ活用は進むのでしょうか。データ活用ができない組織には共通点があると指摘する、統計家の西内啓氏が、陥りやすい落とし穴をもとに実践的なデータ活用論を解説します。

利益に繋がる要因からアクションを起こせるか?

連載1回目では、企業がデータ活用でつまずく理由は「データ」「分析」「意思決定」「現場」の4つの中のいずれかにある、という考え方を紹介しました。いくら素晴らしいデータが揃っていても、いくら素晴らしい分析担当者がいても、意思決定を行う責任者が分析結果をもとに、何の手も打たない人であれば、そこからは何の価値も生まれません。

企業のデータ分析とは要するに「どのような要因が自分たちの利益に繋がっているのか」を明らかにすることです。利益向上に繋がる要因を見つけたときに、そこから適切な打ち手を考えて、社内調整を行うことができる「良いボス」は、ともすればデータ分析のスキルを持った人材以上に、日本企業の中で貴重な存在かもしれません。

それでは、次にこの「利益に繋がる要因」が見つかった時、どのように打ち手を考えればよいのかについてもう少し詳しく学んでみましょう。こうした話はあまり統計学や機械学習の教科書で語られることはありません。しかし、実のところとてもシンプルなことです。それはデータ分析の結果から考えるべき打ち手とは基本的に、「変える」か「狙いをずらす」かの2つしかないからです。

売上に繋がりそうな重要因子を導き出す

例えば仮に、ある家電メーカーが「よく売れる家庭用の液晶テレビとそうでないテレビの違いはどこにあるのか?」を分析したケースについて考えてみましょう。競合商品のカタログ情報を収集すると、画面サイズ、重さ、色、どのような端子がいくつ付いているか、などのスペックに関するデータが揃いますし、付き合いの深い家電量販店から「それぞれのモデルの平均的な実売価格はいくらか」「それぞれのモデルの累計売上はどれくらいか」というデータを入手することができます。

こうしたデータを集めていくと、スペックや価格はほとんど変わらないのに、なぜか売れている機種が見つかるかもしれません。この場合には企業や商品ブランドごとのイメージ調査などを行うことで、「何となくかっこいいと思ってもらえている」「何となく信頼できると思ってもらえている」といったスコアを得ることもできます。

さらには、ビデオリサーチ社などに依頼すれば、会社ごとにどのようなメディアに、どれぐらいの広告を出稿したか、というデータを得ることもできます。これらを付き合わせてデータ分析を行った結果、例えば「この端子が付いていると何億円分売上が高い」「ブランドに対して信頼ができるというスコアが平均で1ポイント上昇するごとに何億円分売上が高い」「テレビCMの出稿量が1GRP増えるごとに何億円分売上が高い」といったような分析結果を得られることがあります。

データ分析をもとにした戦略を「変える」決断

もちろん、こうした分析結果をただ眺めているだけでは絶対に売上は増えませんが、これらを踏まえて戦略を「変える」というアクションを取ることで売上向上の可能性はあります。

例えば、商品開発部門にかけあって「新モデルには売上に影響を与えると予測される、端子を付けてもらう」というのも立派なアクションです。特定の価格帯のモデルが異常に売れ行きが良いというのであれば、販促金を投じて実売価格の値下げを行うというのもアクションのひとつでしょう …

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