デジタルマーケティング分野の総合イベント「宣伝会議インターネット・マーケティングフォーラム」が6月5〜6日、ANAインターコンチネンタルホテル東京で開催されました。12回目を迎えた今年のテーマは、「Industry Innovation 〜新しいルールをつくる人たち〜」。
いま、デジタル技術を駆使した新たな価値提供や顧客体験の創造は、業界を超えた共通の課題です。本フォーラムでは顧客体験を軸に、商品やコミュニケーション、組織、さらに産業全体にイノベーションを起こす先進企業が、その取り組みを紹介しました。本号では、基調講演を中心に主なセミナーをレポートします。
デジタルサービスで日常生活を包括的にサポート
いま、多くの産業で事業再編や新規事業開発などの変革が求められているが、金融業界もそのひとつだ。本講演では、イオン銀行の橋部智之氏と、ふくおかフィナンシャルグループの永吉健一氏が登壇。Webディレクターからイオン銀行員という異例のキャリアを持つネットバンキング推進部長と、ふくおかフィナンシャルグループの行員でありながら企業内ベンチャーであるiBankマーケティングを起業した代表取締役が、それぞれの取り組みについて語った。
──現在、2人が取り組む挑戦についてお聞かせください。
橋部:スマートフォンを活用したデジタルサービスでお客さまとの関係をつくり、それをどう維持していくのか、ここ数年チャレンジを続けています。イオン銀行のインストアブランチを武器に、お客さまがリアルとデジタルを行き来できるサービスをアプリで提供して、日常生活のお金にまつわるすべてをサポートしたいと思っています。
永吉:iBank社はふくおかフィナンシャルグループ内の「出島」的存在で、本体とは切り離されたエンティティとして非金融領域を含めたさまざまな異業種の方々と広くコミュニケーションをとりながら、いろいろなサービスの開発に取り組んでいます。
現在、展開している「Wallet+(ウォレットプラス)」は預金や決済、ローンや資産運用といった金融サービスの一つひとつを、利用シーンに合わせて見せ方を仕立て直し、シームレスにつなぐことで従来にない顧客体験を提供する新しいマネーサービスです。
──日常生活に役立つデジタルサービスを提供し、顧客との接点を増やしているのですね。
橋部:そうですね。我々が展開する「通帳アプリ」は、どこにいても入出金や残高状況を確認できるシンプルなアプリです。イオン銀行はもともと通帳を発行していないので、非常に好評で、現在80万人のお客さまにご利用いただいています。現在、開発を進めるのは、生活全般のさまざまな決済状況を確認でき、ユーザーに節約や貯金の知識をつけていただきながら、お得に賢くお金の管理をしていいただくようなサービスです。
永吉:非金融業の方々まで連携の間口を広げるとビジネスチャンスが拡大しますよね。私たちは、お金(金融)に関するものに限らず、地域イベント、グルメ、旅行、結婚など、非金融領域も含めたさまざまな情報コンテンツ(記事)を発信しています。ユーザーはそうした情報に触れることで、「やりたい」「行きたい」「欲しい」といった欲求が刺激されます …