デジタルマーケティング分野の総合イベント「宣伝会議インターネット・マーケティングフォーラム」が6月5〜6日、ANAインターコンチネンタルホテル東京で開催されました。12回目を迎えた今年のテーマは、「Industry Innovation 〜新しいルールをつくる人たち〜」。
いま、デジタル技術を駆使した新たな価値提供や顧客体験の創造は、業界を超えた共通の課題です。本フォーラムでは顧客体験を軸に、商品やコミュニケーション、組織、さらに産業全体にイノベーションを起こす先進企業が、その取り組みを紹介しました。本号では、基調講演を中心に主なセミナーをレポートします。
考える過程と振り返りを大切にプロ意識を育てる
多くの業態で既存のビジネスモデルの転換を迫られる今、マーケティング領域でも外部から人材を招聘し、組織の刷新を目指すケースが増えている。マーケティングのプロとして事業会社に入った彼らは、どのように組織やブランドの強みをつくり上げているのか。アットホームのコミュニケーションに携わる片井啓介氏と、サンリオの中期経営計画に携わる木村真琴氏に聞いた。
──お二人とも転職して現在の会社でマーケティングに携わっていらっしゃいますが、ご経歴と現在の部の体制を教えていただけますか。
木村:P&G、ソニーマーケティング、西友を経て今年1月にサンリオに入社し、マーケティング本部の立ち上げを担当しました。当社にはこれまでマーケティングを統括する部署がありませんでした。4月に新設したマーケティング本部はメディア部を母体とし、デジタル統括部、キャラクター推進部、ブランドエクスペリエンス統括部で構成されています。
800以上のキャラクターを、どう育て生かすのか、マネジメントやブランド戦略も担います。中期経営計画のタイトルが「Marketing Innovation Project 2021」で、マーケティング機能強化が経営上も大きなテーマです。
片井:博報堂プロダクツなど2社を経験し、アットホームに入社しました。昨年8月から営業本部の中にマーケティングコミュニケーション部が入り、どちらかというと広告宣伝の色合いが強いです。営業本部の本部長は社長が兼任しており、多くのプロセスを踏まなくても意思決定できることがメリットです。同部はプロモーショングループ、不動産会社に向けたツールづくりなどを担当する制作グループ、そして広報グループで成り立っています。
──マネジメントをする立場で入社されていらっしゃいますが、どのように組織づくりに取り組んでいますか。
片井:部下にはマーケティングや広告宣伝は専門職で、プロ意識を持ってと伝えています。外部のマーケターと接する機会を持たせるなどし、自分の目的、目標を持ってもらうようにしています。仕事はプロセスを大事にし、その結果をレビューします。結果は必ずしも成功でなくてもいいと思っていて、失敗をして、ダメだったところを理解することも大切です。
木村:実施した施策に対してレビューをすることはとても大事ですね。特に「昨対主義」でありがちな、去年と同じことを同じ時期にやることに意味があるのか問いかけます。往々にして思考停止になりますが、自発的に考えるようになった時に、「こういうフレームワークがあるよ」と伝えます …