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コミュニケーションボーダレス時代におけるオウンドメディア・公式アカウントの役割

小林剛(トライベック・ブランド戦略研究所)

情報が拡散される時代、企業が発信する情報の価値は低下しているのでしょうか。いえ、オウンドメディアやソーシャルメディアの公式アカウントはじめ、その重要性はさらに高まっています。いまどのような変化が起き、効果的な活用ができるのか、トライベック・ブランド戦略研究所 取締役 小林 剛氏に聞きました。

コミュニケーションの主導権が企業から生活者に移った

本格的なデジタル時代の到来。これは私たち生活者を取り巻く環境の変化だけでなく、企業が進めるデジタルシフトによってマーケティング活動そのものにも大きな変化をもたらしています。

歴史を振り返ると、2001年ADSLの普及によって急速に浸透したインターネット環境、2007年に登場したiPhoneを皮切りとしたデバイスの進化、そして今まさに起きつつあるAIによるテクノロジーの進化など、変化の波は止まることを知りません。今後、数年の間にも、まだまだ変化・進化し続けていくことが予想されます。そしてこの急激な環境の変化にもっとも影響を受けている領域こそが、企業と生活者のコミュニケーションと言えるでしょう。

これまで、企業と生活者のコミュニケーションの主導権は企業側にありました。マスメディア全盛の時代において、4マスと言われるテレビ、新聞、雑誌、ラジオが企業のブランドに対する有益な情報発信のプラットフォームとして多くを占めていたからです。しかし、この状況はインターネットの普及によって大きく変わることになります。

もちろん広告メディアとしてネット広告が急激に成長したとも考えられますが、広告手法などがインターネットによって複雑化したというより、生活者の価値観の変化を含め、根本的にコミュニケーションの形が変わったことが大きな要因と言えます。特に2008年に日本でサービスを本格的にスタートしたFacebookやTwitterなど、今回のテーマであるソーシャルメディアの登場によって、瞬く間に情報発信の主導権が企業から生活者に移りました。

あらゆる生活者が、企業の持つブランドのさまざまな情報へネット経由で自由にアクセスすることができ、また自らが情報発信の主体となって編集し、別の生活者へと容易に届けることが可能になりました。これは従来型のコミュニケーションの崩壊を意味し、マーケティングのパライダイムシフトが起こったと言っても過言ではありません。

では企業は改めてこのような現状をどう捉え、何に取り組むべきなのでしょうか。まず現状の捉え方について、情報発信の主体がどこにあり、どのような違いがあるのかを理解することから考えたいと思います。現時点において情報の主体は企業であり、生活者であり、そして日本だけでなく世界でもある、と言えそうです。つまり、コミュニケーション主体について境界線のない状態、ボーダレス状態にあるということです。

あらゆる生活者が、あらゆる場所から、あらゆる情報へ自由にアクセスし、判断し、行動することができる時代。それこそが「コミュニケーションボーダレス時代」と言えます。この時代において、企業はこれまでのように意図や狙いを持ってコミュニケーションしようとしても、それが意図せず間違ったコミュニケーションになっていくリスクがあることを認識しなければなりません。

一方で、その狙いが生活者の期待をはるかに上回り、素晴らしい成果となることも少なくありません。企業にとってはチャンスであり、リスクでもある。こうした極端な状況がコミュニケーションボーダレスの状態では起こり得るということです。

このような時代に企業が重点的に取り組むべき点は2つあります。

1つ目は、コミュニケーションボーダレス時代だからこそ、メディアの枠を超えた生活者に寄り添ったコミュニケーションを追求していくということです。改めて、自社の顧客の行動をメディア横断で捉えることで、顧客がどのようなニーズを持ち、どのような行動特性があり、何を期待しているのかなど緻密な"気持ち"に寄り添い、それに応える情報提供をしていかなければなりません。

そして2つ目は、その気持ちを裏切らない"信頼できる"情報を届けることを約束することです。コミュニケーションボーダレス時代は、生活者にとって膨大かつ有益な情報を自ら見つけることのできる状態であると同時に、膨大な情報の波に飲まれ、どの情報が自分にあった"信頼できる"情報なのかを見失うこともあります。事実、ここ最近のニュースにおいても、情報の信頼性という観点で耳を疑うような話も後を絶ちません。

生活者はソーシャルメディア上の情報だけを信頼するのではなく、企業の唯一の公式情報発信メディアであるオウンドメディアの"信頼できる"情報も大変重要だと理解しています。

これらの重点的に取り組むべき点について、オウンドメディア、ソーシャルメディアといった企業が生活者とのコミュニケーションに必要不可欠なこの2大メディアをどのように活用していくべきかを見ていきましょう。

公式サイト・アカウントの成功方程式が変化

オウンドメディアとソーシャルメディアは、一見するとその役割や特性において大きく異なるものだと思われがちです。確かに一般論で言えば、オウンドメディアの情報発信や運営の主体はあくまで企業側にあり、商品ブランドの情報から企業情報、IR情報など幅広いコンテンツを扱っています。

一方のソーシャルメディアは、生活者同士がつながりを持ち、生活者同士のコミュニケーションが生まれる場所で、コミュニケーション主体は生活者側にあります。しかし、近年、これらの役割は崩れつつあります。

ソーシャルメディア上にはさまざまな企業の公式アカウントがあります。LINE、Facebook、Twitter、YouTube、Instagramなど、代表的なものだけでも相当な企業の公式アカウントが存在しています。もはや企業は自社のオウンドメディアだけで生活者がアクセスするのを待って"おもてなし"するだけではコミュニケーションが成立せず、ソーシャルメディアを通じて積極的に情報発信していくことで、"出会い"を創出するということも必要不可欠になってきているのです。

つまりソーシャルメディアとオウンドメディアの 両メディアを融合し、"出会い"から"おもてなし"まで一貫したコミュニ ケーションデザインを描き、生活者に とって欠かすことのできない、より多 くの有益なコンテンツを届けられる状 態を構築することこそが、コミュニケーションボーダレス時代のコミュニケーション成功の方程式と言えます。

ここに興味深い調査結果があります。生活者に向けた質問で「普段接している情報メディア」を聞くと、圧倒的に「テレビ番組・CM」という回答になります。しかし回答者を「企業の商品・サービス購入経験者」に絞り込むと、「当企業の公式サイトや公式アカウント」と回答した方がもっとも多かったのです。

各回答項目の割合も見て分かるように、ひとつのメディアに偏ることなく、さまざまなメディアを横断的に利用している傾向が見てとれます。つまり生活者自身が、点ではなく面として、コミュニケーションしている実態が浮かび上がります。

これまでのようなオウンドメディア、ソーシャルメディアの役割を"点"として別々に定義するような一般的なメディア論ではなく、生活者基点で考える一連のコミュニケーションを"面"の「コミュニケーションプラットフォーム」として捉えることが求められているのです。

図表1 ふだん企業や商品の情報に接している情報媒体(ベース:全回答者)

図表2 情報媒体別購入経験(ベース:それぞれの媒体の接触者)
「Web Equity 2016調査結果」トライベック・ブランド戦略研究所実施

[調査概要]
調査目的 日本国内のBtoC企業におけるWebサイトの効果と価値を把握する
調査対象企業・ブランド数 260企業・ブランド
調査方法 調査モニターを使ってインターネット上でおよそ過去1年間における各企業サイトの利用動向について調査。
アンケート調査期間 2016年6月3日~6月15日
アンケート調査対象者 全国各地の20歳~69歳までの一般消費者
アンケート有効回答数 1企業あたり1200~1500人 総数:2万1440人

共感コンテンツを生み出すオウンドメディアの役割

オウンドメディア、ソーシャルメディアを一つの「コミュニケーションプラットフォーム」として機能させる上で特に重要なことは、「プラットフォーム」に流通させるコンテンツをどう生産し、運用していくかです ...

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