インターネット上やSNSを中心に話題になった商品。その効果に多大な期待を寄せてしまう企業も少なくありません。しかし、「バズ」に期待することは本当に正しいのでしょうか。フラッグ 代表取締役の久保浩章氏は、「バズ」へ寄せられている期待に警鐘を鳴らします。
バズが起きるとはどのような状態なのか
近年、商品やサービスが"バズる"──いわゆるインターネット上で話題となる機会が増えています。"バズ"とは、そもそも口コミのことを表します。企業側が従来の広告宣伝のように、ユーザーに対して一方的に商品やサービスについて知ってもらうための発信を行うことではなく、ユーザー自身が「この商品、いいね」「この企業、いいね」と口コミで商品やサービスの情報を広げていき、その口コミがある閾値を超えたときに"バズが起きた"と言われるのです。
確かに"バズが起きる"と、通常ではリーチをしないユーザーにまで商品やサービスの情報が届くことがあります。ここが今までの広告やPRと大きく違うところです。個々のユーザーの善意やモチベーションによって情報が拡散していくため、こういった情報は基本的に企業側がコントロールすることはできません。つまり、他力本願なマーケティングとも言うことができます。
そもそも"バズ"はなぜ起こるのでしょうか。バズが起こる条件は、商品やサービスの質が良いときや、ユーザーに高い評価を得る理由があるときに限ります。
たとえ、インターネット上でバズが起きたとしても、「実際に商品を買って試してみたらおいしくなかった」「サービスがつまらなかった」という情報が広がってしまえば、その商品やサービスのポテンシャルは見掛け倒しとなってしまいます。こういった点から、バズ・マーケティングを行う上での大前提として、商品、サービスの良さが必要不可欠なのです。
ステマが生まれた背景にはバズへの期待も
しかし昨年あたりから、"バズる"要素のない商品やサービスだとしても、「とにかくバズらせてほしい」というオーダーが、クライアントから少なからず寄せられるようになりました。
商品、サービスに力のないものを無理やりにでもバズらせようとした結果、何が起きたかというと、昨今問題となったステルス・マーケティングの問題にたどり着くのだと思います。
紹介されるかどうかもわからない、話題になるかどうかもわからない。それでは依頼する企業側もお金を出しづらい。そこで広告会社やPR会社は企業側に宣伝効果が出るように話を持っていきたいがために、また、まるで自然とバズが起こっているかのように見せるために、広告であるにも関わらず広告表記を付けないというルール違反を犯すようになります。これではユーザーの善意で拡散するバズ・マーケティングの本質とは大きくかけ離れてしまいます。
大手企業までがバズ・マーケティングに興味
もともと数年前までのバズ・マーケティングは、"貧者のプロモーション"とも言われていました。広告費を大量に投下できないベンチャー企業や中小企業などが、何とか頭を使ってインターネット上の口コミを活用したプロモーションを行っていました。おそらく大企業側からその様子を見ていると、とても効果が出ているように見えたのではないかと思います。
一方、予算が潤沢にあるナショナルクライアントは …