渋谷にあるスマートドライブのオフィス。様々な知識、経験を持つ社員が集まっている。
新しい価値を量産する自動車のIoT
スマートドライブが開発した「SmartDriveデバイス」は、自動車の整備用ポート「OBD-Ⅱコネクタ」から、車速や排気ガス量、エンジン回転数、ブレーキの使用状況など、車の中のネットワークを流れる膨大な量のデータをリアルタイムで取得できるデバイスだ。渋滞が起こりやすい場所や事故リスクが高い場所に対策を施すなどの交通計画の見直しに活用できるほか、そのデータはさまざまな価値を生む可能性を秘めている。
CEOの北川烈氏は次のように話す。「自動車などの移動体に通信システムを組み合わせてリアルタイムで情報を取得する“テレマティクス”の概念は10年以上前から存在していた。しかし、従来は機器の価格が十数万円と高価で、車への取り付けも非常に難しく、一般に浸透していなかった。そこが、テレマティクスが抱えてきた課題。近年は注目が集まり、自動車メーカーもテレマティクスに取り組んでいるが、我々はメーカーの垣根を超えてデータを取得できる点に強みがある」。
同社が10月28日に先行販売を行った、データをスマートフォンアプリで可視化して運転スキルを診断する一般向けIoTサービス「DriveOn」は、OBD-Ⅱコネクタのソケットにプラグをさし込むだけなので、女性でも簡単に車に取り付けられる。
運転をするだけでポイントが貯まり、急ブレーキや急発進をすると注意喚起してポイントは減点される。貯まったポイントはTポイントなど外部ポイントにも交換できる予定で、自然と安全運転を心がけるようになる仕組みだ。
先行販売価格は7500円からと、従来品と比べてかなり低価格。「デバイスの価格を大幅に下げることができたので、保険会社や自動車整備会社から保険や整備を申し込んだ人にデバイスを無料配布してもらったり、最初から車に装備してもらえるレベルになっている。今後はデバイスを介して集めたデータを活用し、自動車のアフターマーケットのビジネスモデルも構築していきたい」。
この構想の第1弾が、2015年4月のアクサ損害保険との業務締結だ。現在、運転特性のデータから事故率を予測して保険料に反映させる走行連動型保険商品の開発を進めている。
北川氏は大学在籍中に国内ベンチャーでインターンを経験し、事業を創る面白さを知った。その後、米国に留学したことがテレマティクス領域で起業するきっかけとなる。
北川氏の専門はデータ解析で自動車業界とは無関係だったが、ある時、知人に自動走行車や電気自動車に乗せてもらう機会があり、大きな影響を受けた。「近未来の世界観を実感した衝撃的な体験だった。以後、自分が研究しているデータ解析の手法をテレマティクスやコネクティッドカーの領域で活用したら何ができるか、と考えるようになっていった」という。
「自動走行車は、自動車業界の周辺産業も巻き込んだ大きな変化をもたらすはず。とはいえ自動走行車が完全に普及するまでには年月がかかる。それならば …