映画プロデューサーとして大ヒット映画を次々と手掛けてきた川村元気氏。小説や絵本など、常に新しいチャレンジをしながら結果を生み出し続けている。一方、CMプランナーの山崎隆明氏は、そんな川村氏のものの捉え方、作品に昇華するプロセスに興味を持ってきたという。ジャンルは違えど、日頃から表現と格闘している2人が互いの「インプットとアウトプット」に迫る。

映画プロデューサー的「企画の原則」
山崎▶ 川村さんの考える映画プロデューサーの仕事とは何ですか?
川村▶ 映画に限らずコンテンツは「普遍性×時代性」だと大昔から言われます。怖い、笑える、泣けるといった人間の感情が「普遍性」ですが、映画は特にお金を払って見るものなので、感情への対価がものすごく求められます。それに加えて、「なぜ今なのか」、つまりなぜ今この時点で公開するのかという「時代性」が求められます。
山崎▶ 『電車男』では、「普遍性」が高嶺の花に恋をしたダメ男のラブストーリーで、「時代性」は2ちゃんねるやネット、ということですね。
川村▶ まさにそうです。もうひとつが、僕のオリジナルで「発見×発明」。面白いものを発見するのは企画のスタートですが、僕は、発見だけで作ってしまってはダメだと思っています。だから、発見したものを大事にしつつも、疑うプロセスがその後、延々と続くんです。ハリウッドの200億円かけた大作映画に2億円の製作費で勝とうと思ったとき、発見だけでは到底太刀打ちできません。発見を補完する発明の柱を10本も20本も打ち込まないと。発明はキャスティングでもいいし、脚本を作っている局面で急に新しい要素
が出てくることもある。それが揃って、ようやく前に進むことができるんです。
山崎▶ もしかして、すごく優柔不断に悩むタイプですか?
川村▶ すごく優柔不断で朝令暮改です。
山崎▶ 自分の感覚に正直だということですね。その結果、『電車男』がヒットしたんですね。
川村▶ でも、その後3年間ぐらい類似企画を求められて …