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広報担当者のための企画書のつくり方入門

DX戦略を支えるインターナル広報の企画書を書きたい!

片岡英彦(東京片岡英彦事務所)

「広報関連の新たな企画を実現しようとするも、社内で企画書が通らない……」。そんな悩める人のために、広報の企画を実現するポイントを伝授。筆者の実務経験をもとに、企画書作成に必要な視点を整理していきます。

DXの取り組みを社内に浸透

企業活動の新たな地平を切り拓くDX(デジタルトランスフォーメーション)は、単なる技術革新以上の意味を持つ変革である。この変革は、企業における根底からの業務改革に他ならず、社員一人ひとりの深い理解と積極的な協力が成功のカギを握る。こうした中で、社内の不安や疑問を解消し、変革への一体感を醸成するインターナル広報の役割は計り知れない。それはまさにDXの取り組みを社内に浸透させ、その価値を最大限に引き出すための重要なプロセスである。今回は、DXの波に乗り遅れないためのインターナル広報の企画書の書き方とその実践について、明確な概念定義とその重要性を理解した上で、詳細に考察していきたい。

視点1
DX戦略とインターナル広報の交差

DX戦略の定義とその目的

企画書を作成する上で、最初に整理したいのはDX戦略の定義と目的である。DX戦略とは、企業がデジタル技術を活用してビジネスプロセスを変革し、新たなビジネスモデルを構築するための総合的な計画である。DX戦略の最終的な目的は、企業が持続可能な競争力を獲得し、市場での成功を確保することにある。具体的には、顧客体験の向上、業務効率化、新商品やサービスの開発、社員の生産性向上などが該当する。

インターナル広報の基本要素

一方、インターナル広報は、企業内部のコミュニケーション活動を指し、組織の目標達成に向けて社員を一体化する役割を担うものである。

図1 インターナル広報の基本要素

1.ステークホルダーの識別(どの社員層にどのような情報を提供するか)
2.メッセージ設計(何を、どのように伝えるか)
3.チャネル選定(どのコミュニケーションツールやメディアを使用するか)
4.タイミングと頻度(いつ、どれだけの頻度でコミュニケーションを行うか)
5.フィードバックと評価(コミュニケーションの効果をどのように測定するか)

今回、考えていきたいのは「DX戦略とインターナル広報が交差するポイント」である。DX戦略とインターナル広報が交差するポイントの数は多いが、特に重要なのは以下の3つであると考える。

図2 DX戦略とインターナル広報の交差

1.組織文化の形成

DX戦略の成功は、社員が新しい技術やプロセスを受け入れ、活用する企業文化に強く依存する。インターナル広報は、こうした文化形成を助ける

2.情報の透明性と共有

DXは多くの場合、組織横断的なプロジェクトである。その成功は各部署や階層が一体となって動くことに依存している。インターナル広報は、必要な情報が適切に共有され、透明性が保たれることを保証する

3.変革の進捗と成果の伝達

DXプロジェクトは長期にわたることが多い。その進捗や成果を社内に向けて定期的に伝えていくことで、社員のモチベーションを維持し、次のステップへの参加を促すことができる

視点2
広報企画書の目的と構造

インターナル広報企画書の必要性

組織内のコミュニケーションがスムーズであれば、組織全体の働きやすさ、生産性、さらには業績に大きく貢献する。しかし、そのような理想的な状況を実現するためには、具体的な計画とその実行が不可欠である。そのための重要なツールとなるのが「インターナル広報企画書」である。この企画書がどのような目的を持ち、どのように構成されているべきかを考えていく。

デジタル変革の方向性を共有する

DXは組織全体が参加する大規模なプロジェクトであり、明確な指針と共有された理解が必要である。インターナル広報企画書は、この方向性を組織内で共有し、DX戦略に必要なアジェンダを明確にする必要がある。そしてデジタル変革を推進するためには、社員一人ひとりのデジタルスキルと理解が基盤となる。企画書には「どのような教育・トレーニングが必要であるか」、その方針とリソースを明示することが望ましい。またデジタル変革は長期的なプロジェクトである。その途中での評価とフィードバックが必要となる。これらをどのように行うか企画書では成果指標を明確にする。

企画書では社員が自社のDX戦略の方向性を理解し、その実施に積極的に参加できるように設計されることが求められている。デジタル変革の成功確率を高めるためには、企画書の詳細な構築とその適用によって、組織全体のデジタル変革の取り組みが具体的で実践的な形に進化することが期待される。

図3 企画書の基本構造

①導入部(イントロダクション)

DX戦略とその必要性、およびその達成に向けた広報活動の目的を明示

②DXの背景と課題点

DXが必要とされる背景と、その達成に向けての内部・外部の課題を列挙

③DXの目的と目標

組織がデジタル変革で達成したい具体的な成果とKPIを設定

④ステークホルダー分析

DX戦略における内外のステークホルダーとその関心事を明確にする

⑤DXメッセージ戦略

どのようなメッセージを、どのように社員に伝えるかの戦略を練る

⑥デジタルと非デジタルのコミュニケーションチャネル

DX戦略に適したコミュニケーションチャネルとその効用を検討

⑦実施計画とタイムライン

DXに関連する広報活動の具体的な実施計画とそのスケジュールを設定

⑧KPIと評価指標

DX戦略の成果をどのように測るかの評価指標を設定

⑨予算とリソース

これらの広報活動に必要な資源と予算を詳細に計画

⑩まとめ

企画書全体の要点をまとめ、次に取るべき行動を明確にする

視点3
ステークホルダー分析とメッセージ設計

内部ステークホルダーのタイプと関心事

社員のモチベーションが向上する成功の鍵は、社員がDXの方向性を理解し、積極的に参与することだ。この目的を達成するための「ステークホルダー分析とメッセージ設計」について考える。各ステークホルダーグループは独自の情報ニーズや関心事を持っている。それに基づいた効果的なメッセージ設計を行うことが、情報伝達の効果を最大化するために不可欠だ。

図4 内部ステークホルダーの分類

経営層

戦略的な視点で情報を必要とし、DX戦略の進捗とROIに関心を持つ

マネージャー/リーダー

チームを指導する立場から、DX戦略が日常業務に与える影響に関心を持つ

一般社員

DX戦略が自分の仕事やスキルにどう影響するか、安全性や利便性に関心を持つ

技術者/開発者

システムやツールの導入と運用に関する具体的な情報を求める

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