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危機を乗り越える広報対応

広報担当者が知っておきたい生成AI活用時の法的リスクのポイント

片山 直氏(シティライツ法律事務所)

この1年で一般的なビジネスの場において一気に身近な存在となった「生成AI」。効率よく文章や画像を生み出すことができるという便利さの反面、生成したものを発信することへのリスク意識も必要となる。著作権侵害をはじめとするリスクとその対策を解説する。

生成AIは期待に溢れる一方で、リスクも潜みます。例えば、画像生成AIの場合、学習に用いられた既存の作品がそのまま出力されてしまう可能性も想定しなければなりません。他人の作品をそのまま無断で利用する行為は、著作権侵害に該当し得るため法的リスクが存在しますし、道義的な観点からも非難され、炎上につながるリスクが存在します。

リスクとの向き合い方

生成AIにおけるリスクを回避・低減するため、何ができるでしょうか。以下では生成AI使用場面の法的リスクのうち、広報業務で特に重要と考えられる点を紹介していきます。

法的リスク①
他人の著作権を侵害するリスク

生成AI使用時の著作権侵害リスクを検討する上では、使用しない場合とは異なる意識が必要となります。

生成AIを使用しない場合、作品Aの利用に著作権侵害が成立するには、作品Aが他の作品Bに似ているという事情だけでは足りず、「作者が作品Bに接したことがあり、それを作品Aに用いている」という事情、「依拠性」の存在が必要になります。真に知らない作品と偶然一致したとしても、理論上は「依拠性」が認められず、著作権侵害が成立しないことになります。

では、作品Bに触れたことがない人が、生成AIを使用して、作品Bを学習用データとして作品Aを生成した場合、「依拠性」は認められるでしょうか。結論、本稿執筆時点において、未だこの議論に決着はついておらず、認められないという見解や認められるべきという見解等が様々存在するところです(図1)。したがって、依拠性については、通常よりも厳しい基準となる可能性を視野に入れておくことが重要です。

図1 生成AIを活用した際の「依拠性」の判断

【対応例】

この侵害リスクへの対応策としては、「学習用データがそのまま出力されるツールを回避」「権利がクリーンな画像のみを学習したツールを使用」「入力プロンプトに作者名・作品名・他人の作品を入力しない」「類似した作品の有無を入念に確認」なども検討されますが、まずは、生成AIから出力した文章や画像等の表現を、どの場面で利用するべきかを検討することが重要です。

最終的な表現として利用する場合には特に、依拠性の議論の結果に左右されないために...

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