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危機を乗り越える広報対応

「多様であること」と「多様性の強要」は違う 学生に聞いた、ジェンダー表現のあり方

ジェンダーを含むダイバーシティへの配慮は企業に求められている一方、一歩間違えれば炎上しやすいセンシティブな話題でもある。企業やブランドのイメージを下げないためのジェンダー表現とは何か。大学生のリアルな声に迫った。

    A:大学3年生。ゼミでフェムテック関連の制作物に取り組む。

    B:大学3年生。インターンで広報業務に関わる。ファッションが好き。

A:2023年のジェンダー問題と言えば、ジェンダーレストイレ(①)が話題になりましたね。なぜ女性が危険に晒される可能性が高いものをつくったのか。恐らく多様性への姿勢を見せることで新たな商業施設の目玉にしたかったのだと思いますが、性犯罪の危険性などをあまりに軽視した結果が炎上につながったと言えそうです。

B:そもそもLGBTQの方々などが本当に欲しているものなのか、という点も疑問です。ジェンダーレスという「トレンドワード」を謳いたかった制作側の意図を感じます。その上で「これが社会が求めていることですよね」と、表面的な解釈を押し付けられた印象がありました。

A:設置するにしても、リスクが少ない設置場所や仕組みなど、配慮すべき点にも向き合いきれていないと感じました。私自身は多様な性のあり方を重視すべき一方、施設などの利用については生物学的性別で分けるのが最適だと考えています。企画を構想・決裁した人は性善説で動いたのだろうと推測しますが、段階的な導入など、丁寧さが欲しかったですね。

①ジェンダーレストイレの問題

2023年4月、東京・新宿の複合施設「東急歌舞伎町タワー」の2階に「ジェンダーレストイレ」が設置された。性別に関係なく使える個室のほか、女性用・男性用、多目的トイレが並ぶ設計だった。手洗い場は共用で、個室扉の前まで誰でも入れるため「男性に待ち伏せされたら怖い」といった声がSNSを中心に多発した。SNSでは実際に、トイレが空いているにもかかわらず手洗い場に留まる複数の男性の様子を映した動画もアップされ非難が殺到。同8月には改修され、男女別のトイレに変わった。

「多様性の強要」という風潮

B:ただ、ジェンダー表現に関する昨今の炎上について、炎上させている側の反応が過剰だと思うことも多いです。「多様であること」と「多様性を強要すること」が混同されているというか。企業も消費者も、多様性を形づくる“自分らしさ” を特別視しすぎている印象です。“自分らしさ” とは本来特別なことではなく、もっとピュアなことであるはず。例えば同性愛者がいても、気にも留めないほど普通のことですし。また個性あるファッションをしていても、皆に馴染むようなファッションをしていてもどちらも“自分らしさ”だと思います。「“自分らしさ”=特別」という考えにとらわれ、「あらゆる“自分らしさ”を許容すること」を押し付ける、また「許容する自分たち」を頑張ってアピールしなくてはならない空気がつくられている。これが過剰な反応につながっている気がします。

A:私も、昨今のジェンダーに関する広告などへの反応は過剰だと思うことが多い...

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