複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。
問題の経緯
2023年4月26日
スープストックトーキョーは4月18日、スープ専門店「Soup Stock Tokyo」外食店舗全店で離乳食を25日より無料提供すると発表。SNS上では賛同の声だけでなく、「子ども連れが増えるなら行かない」などの批判も一部あった。それを受け26日、同社では公式サイト上で、取り組みへの思いや実現したいことについて改めて発信した。
スープストックトーキョーが4月26日、「離乳食提供開始の反響を受けまして」との声明を発表しました。18日に離乳食の無料提供を公表したところ、これを非難する声がSNSに投稿されるなど反響が大きかったことがきっかけです。
今回は、このケースを題材に、サービスの内容に対して非難する声が挙がった際の危機管理広報のあり方について検討します。
応援の声が広がった理由
スープストックトーキョーは4月18日、スープ専門店「Soup Stock Tokyo」で、9~11カ月の子どもを持つ顧客に対して離乳食の無料提供を開始することを発表しました。単に無料提供を開始するというだけではなく、その理由も合わせて説明。その内容は、「お父さんやお母さんと一緒に食事の時間を楽しんでいただきたいという思い」などというものでした。
この発表に対して、「女性が一人で入れる店だったのに!」「子どもが苦手なのでもう行かない」「余計な事するな!」「まともな客は来ない」などの声が集まったのです。
しかし、非難する声が目立ったせいか、その後、スープストックトーキョーの発表に賛同する人、応援する人たちの声が多く寄せられました。「炎上」などとネットニュースで報じられ、また、Twitterのトレンドにこの件が載る頃には、賛同、応援する声のほうが多かったように思います。
スープストックトーキョーの発表に賛同、応援の声を投稿する人が多かった理由の1つは、非難する人たちがSNSに投稿した内容が汚く、罵るような言葉を使っていたことで、賛同、応援する人たちにとっては黙っていられなかったことが考えられます。堪忍袋の緒が切れた状態です。
もう1つの理由は、スープストックトーキョーの公式サイトの文章に「気持ち」「感情」が表現され、それが読んだ人に伝わったからです。新しいサービスの開始をPRするリリースを出すときには、マニュアルやコンサル本の影響からか、定型文書や無味乾燥で要点だけを絞ったものになりがちです・・・