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避難を促す広報と心理

無関心層への防災啓発、伝わる内容7つの工夫

中村 功(東洋大学)

迅速な行動喚起が必要な避難指示。その伝達は一刻を争うこともあります。災害情報論の視点から、情報の受け手の心理について考えます。

一般に防災の啓発活動をする時、防災に関心のある人や自治会といった防災関連団体に属する人だけがそれに参加する傾向があります。そうなると、もともと関心が高い人の知識は増えるものの、本来ターゲットにしたい無関心層に知識が届かないという問題が生じます。これは防災教育のパラドックスと呼ばれます。無関心層にいかに情報を伝えるかは、防災の面からも広報一般の面からも重要な課題です。そこで関心の薄い人にどう伝えるかについて2回にわたり考えます。今回は伝える内容についてです。

伝達目標の確認

無関心層への伝達でまずしなければならないのは、誰に何を伝えるべきか、という伝達目標の確認です。たとえばある調査では、災害への不安はあるものの、何をしたらよいか分からず、結局防災への備えをしていない人が多いようです*1

*1 セコム「防災に関する意識調査」(2021)https://www.secom.co.jp/corporate/release/2021/nr_20210818.html

あるいは防災への備えをする人の率は高齢者で高く、一人暮らしの人で低いという調査結果もあります*2。そうなると特に一人暮らしの人に、具体的に何をするべきか、を伝えることが大事ということになります。

*2
内閣府「防災に関する世論調査」
https://survey.gov-online.go.jp/h29/h29-bousai/index.html
セコム「防災に関する意識調査」(2022)
https://www.secom.co.jp/corporate/release/2022/nr_20220824.html

一方、防災行動としてまず大事なのは...

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