日本唯一の広報・IR・リスクの専門メディア

           

避難を促す広報と心理

情報の欠如・不安心理から生じる災害のデマ・流言対策

中村 功(東洋大学)

迅速な行動喚起が必要な避難指示。その伝達が一刻を争うこともあります。災害情報論の視点から、情報の受け手の心理について考えます。

災害時にはデマや流言といった不確かな情報がよく流れます。流言は人々の不安を高め、時には避難さわぎなどの混乱をもたらすので、制御するべき情報です。最近ではSNSの発達により、流言の伝播スピードが速くなっているので、より警戒が必要です。学問的には流言は「人づてに伝わる根拠の不確かなコミュニケーション」であり、うわさとほぼ同義です。一方デマは悪意を持って誤情報を流すことで、厳密には流言と異なるのですが、マスコミでは流言と同等に使われています。

発生メカニズム

流言は、人々の心理が流言に反映することで発生するという心理的側面があります。たとえば災害時の不安心理を背景に「恐ろしいことがまた起きるのではないか」となり、「〇月〇日に災害がまた起きる」という災害再来流言が発生します。あるいは日ごろから外国人に否定的な感情を持っている住民の間では「外国人が悪いことをしているらしい」と流言が発生することもあります。

他方、流言は必要としている情報が欠如しているときに、集合的に形成される「即時的なニュース」であるという社会的な側面もあります。すなわち流言は一人の人によってつくられるのではなく、あるアイデアを口にした人の疑問の形式で始まり、それに対して評価・論評・伝達する人が加わり、社会的に形成されるのです。

流言への対策

第1の対策は流言の否定です。たとえば、関東大震災時には朝鮮人が暴動を起こしたかのようなデマを否定するチラシを...

あと60%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

避難を促す広報と心理 の記事一覧

情報の欠如・不安心理から生じる災害のデマ・流言対策(この記事です)
経験の逆機能と超高齢社会への対応
警告を無視する「正常化の偏見」
危険を呼びかける表現方法──恐怖の説得は有効か
多メディア時代における災害情報の伝え方
災害情報における認知ギャップと構造──2022年8月豪雨災害を例に
広報会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する