日本唯一の広報・IR・リスクの専門メディア

           

避難を促す広報と心理

危険を呼びかける表現方法──恐怖の説得は有効か

中村 功(東洋大学)

迅速な行動喚起が必要な避難指示。その伝達が一刻を争うこともあります。災害情報論の視点から、情報の受け手の心理について考えます。

避難指示などの避難情報は、情報を分かりやすく伝える側面と、避難を促すことを目的とした説得コミュニケーションの側面があります。その際、どのような表現をしたら分かりやすく、また効果的なのでしょうか。

避難情報に欠かせぬ具体性

災害社会学者ミレッティによると、避難情報における表現には「具体性」「一貫性」「明確さ」「分かりやすさ」「正確性」が必要だといいます*1。いずれも重要ですが、注目したいのは具体性です。どのような危険なのか、それによりどのような被害が発生し、どのような対応をするべきか、具体的な表現が必要です。

*1 Mileti, D. S. and Sorensen, J. H., 1990, Communication of emergency public warnings;A Social Science Perspective and State-of-the-Art Assessment, Prepared for the Federal Emergency Management Agency Washington, D. C., https://www.osti.gov/servlets/purl/6137387

例えば「〇〇川が氾濫する恐れのある水位に達しましたので〇〇地区に避難指示を発令しました。〇〇公民館を避難所として開設しています。直ちに避難を開始してください」といった表現をすることがあります。しかしこれでは、どこが、いつ、どのくらいの浸水被害を受けるのか、定かではありません。浸水シミュレーションを...

あと60%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

避難を促す広報と心理 の記事一覧

危険を呼びかける表現方法──恐怖の説得は有効か(この記事です)
多メディア時代における災害情報の伝え方
災害情報における認知ギャップと構造──2022年8月豪雨災害を例に
広報会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する