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大学広報ゼミナール

北極星を輝かせるロマンティストたれ

鈴木洋文(高崎商科大学)

今回は企業連携でお世話になっている「面白法人カヤック」とのお話から始まります。「つくる人を増やす」という経営理念どおり、創造力が高く、ユーモアあふれるアイデアを生む人材の宝庫といえるカヤック。モノ・コトから見出した価値をコンテンツ化し、数々の“バズる”企画を生み出してきました。そんな先進的企業の人事担当の方に、大学教育に期待することを尋ねたところ、カヤック流の答えは「何もしないでください」でした。

その真意は、大学が敷いたレールに学生を乗せるのではなく、やりたいことをやりたいようにやらせてあげてほしいということ。結果として、「ブレインストーミング」を取り入れた、学生の主体性を重視する新たな入試の共同開発にも至りました。今回は、そんな「何もしない」大学教育について本学が実施した広報戦略の紹介とともに、考察していきます。

ブランドを構築する広報戦略

2019年3月、卒業生の小濱英之氏がワークマンの社長に就任したというニュースが飛び込んできました。広報担当としては、あらゆる方面に告知をしなければいけないと、使命感に近い感覚でその出来事を捉えました。思考を巡らせた結果、そのままの事実を素直に伝える駅看板やLPサイトを作成することに。反響は大きく、志願者数にも好影響を与えました。

駅看板やLPサイトでは、ほかにも丸紅ニューヨーク本店のアカウンティングマネージャーやウェブサイト制作会社の経営者、肉バル経営者など、自分らしく活躍する卒業生を一緒に紹介。関係者から「うまく就職先を宣伝したね」と言ってもらえることもありましたが、それは、この戦略の本質を捉えた言葉ではありません。

広告とPR(広報)について書かれた書籍『ブランドは広告でつくれない』(翔泳社)によると、ポジショニング戦略で有名なアル・ライズは、PR(広報)はブランドを構築するもので、広告はブランドを維持するものだと述べています。まさに、この社長就任を伝える取り組みはブランド構築のための広報活動で、制作企業へは“ブランディング施策”を依頼しました。

ワークマンは、低価格高機能商品で差別化を図る、ポジショニングの基本教材のような企業です。そのような従来のブランドイメージを維持しながらも、「過酷ファッションショー」など常識破りなコミュニケーション戦略で新たな価値も生み続け、他社の追随を許さずにブルーオーシャンを軽やかに泳いでいます。

誰もが知る大企業の顔である社長が卒業生となれば、説得力は抜群です。ワークマンというアグレッシブな企業イメージも相まって、本学のブランドイメージは構築され、20周年ブランディング事業「toTUC計画」へと...

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