日本唯一の広報・IR・リスクの専門メディア

           

避難を促す広報と心理

多メディア時代における災害情報の伝え方

中村 功(東洋大学)

迅速な行動喚起が必要な避難指示。その伝達が一刻を争うこともあります。災害情報論の視点から、情報の受け手の心理について考えます。

警報や避難指示といった災害情報は、危険地域にいる人たち全員に確実に伝達する必要があります。そこで重要なのが伝達メディアです。利用できるメディアには、テレビ・ラジオ、スマートフォン(緊急速報メール・アプリ・SNS)、防災無線、そして消防団員などによる直接の声かけがあります。

メディアミックス戦略

テレビは見ていない人には伝わらない、スマートフォンは高齢者が使いこなせない、防災無線の屋外スピーカーは、荒天時は聞こえにくく戸別受信機は普及が進まない、そして人的呼びかけは都市部では難しいなど、各メディアには一長一短があります。そこでまずとるべきは、重要な防災情報はあらゆるメディアを組み合わせて使うという、メディアミックスの戦略です。

実際、活躍するメディアは場面によって異なっています。たとえば東日本大震災時には、地震に驚いた人がまず屋外に出たので防災無線の屋外拡声器が活躍しました。あるいは2018年の西日本豪雨時には広島市ではテレビが、西予市では消防団の呼びかけが役立ちました。そして2019年の台風19号時には、長野市では緊急速報メールや自治会の呼びかけが、本宮市では防災無線の戸別受信機が役に立っています。インターネット時代だからといって、メディアをそれ一本に絞るわけにはいかないのです。

一方、災害の危険は場所によって全く異なるので、GPSなどの地理情報を利用して、現場に即した情報をピンポイントに伝えるジオターゲティングも重要です。たとえば...

あと60%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

避難を促す広報と心理 の記事一覧

多メディア時代における災害情報の伝え方(この記事です)
災害情報における認知ギャップと構造──2022年8月豪雨災害を例に
広報会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する