人材の多様性を活かし、誰もが力を発揮できる組織を実現する。そのためには、広報パーソンが、D&Iの議論に向き合い、理解を深めていくことが第一歩となります。
前回は「社内の広報」に焦点を当てましたが、今回は障害者雇用における「社外の広報」について、CSRレポートやサステナビリティレポートを中心にお話しします。
CSRレポート等の現状
これまで述べたように、大企業を中心に障害者雇用はCSRの課題であるという認識が定着しつつあります。またCSRレポートやサステナビリティレポートで、障害者雇用をD&I促進の課題、サステナビリティやESGの社会(S)の課題と位置づける企業も増えています。
しかしその多くは、残念ながら自社の障害者実雇用率を記載するだけで終わっています。障害者雇用の先進企業のレポートのように、障害者雇用に関する経営理念、具体的な社内の施策や推進体制、障害者従業員の所属部署、従事する事業内容、合理的配慮による具体的な戦力化の内容や、社内で果たしている役割等を詳細に述べている企業は、いまだ少数に限られているのです*。つまりレポートを読んでも「この企業で障害者がどのように働いているか」という具体的な姿が、一向に見えてこないのです。
*山田雅穂(2022)「特集 サステナビリティと人権 特集論考 障害者雇用と人権」『サステナビリティ経営研究』(日本経営倫理学会)第2号、pp.20-23
このことは第1回と第3回で詳述した「女性やLGBTIの方々に比べて障害者がD&Iの議論から取り残されている状況」と深く関わっていると...