人材の多様性を活かし、誰もが力を発揮できる組織を実現する。そのためには、広報パーソンが、D&Iの議論に向き合い、理解を深めていくことが第一歩となります。
現在、障害者雇用は多くの企業でD&I促進の課題とされ、サステナビリティやESGの社会(S)の観点からダイバーシティの課題とする企業も増えています。この意味で障害者はD&Iの対象としては広く認識されていますが、具体的な施策や人材戦略の議論となると、障害者がいつの間にか対象から消えていることがほとんどです。
前回お話したように、合理的配慮により重要な戦力になるにもかかわらず、女性やLGBTIの方々に比べると障害者はD&Iの具体的な議論から取り残されています。なぜでしょうか?その理由はD&Iの議論に「経営倫理」の視点が欠けているからです。
「経営倫理」とは何か?
1960年代の企業不祥事を契機に、1970年代後半に米国で誕生した経営倫理学を日本に最初に紹介した水谷雅一教授は、経営倫理について次のように述べています*1。旧来からの「効率性原理」と「競争性原理」の二原理中心による利益の極大化を最重要な価値ある考え方とする企業価値観に対し、「人間性原理」と「社会性原理」をそれらと対等の価値として加えた「経営価値四原理システム」が、現在求められる最重要の企業経営であるとしています。
さらにそれは「組織活動の効率性や競争性の強化を通じて利益追求の過程や結果において人間性や社会性を軽視したり無視したりしない企業」です。つまり企業の目的である利益追求の方法や過程が、人間性や社会性の尊重という倫理に...