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IRの学校

IRの学校 7時限目「SDGsと企業活動<後編>」

大森慎一(バンカーズ)

イラスト/もとき理川

大森:さて、前回杏奈さんたちの会社の議論になった、「SDGsと企業活動」について、体裁だけのSDGsになっていないかチェックは重要というところで、ゴーイングコンサーンの話が出たんでしたね。

ゴーイングコンサーンとは?

大森:私はゴーイングコンサーンは、会社は永続的に活動を続けることが極めて重要である、というような会社の原則だと思っています。

上場:でも、どうしても会計用語としての「継続企業の前提」に関する注記のイメージが強く、マイナスな響きに聞こえます⋯⋯。

大森:確かに「継続企業の前提」に重要な疑義がある場合の注記だから、悪い状態ではあるね。少し掘り下げよう。まず財務諸表は「継続企業の前提」でつくっている。逆に言うと、その前提が崩れる、つまり事業活動が継続できないおそれがある状況では、「財務諸表は正しく表記されていないかもしれない」「不確実な状況の影響が反映されていない」ということだね。

株谷:事業活動が継続できないリスクがあるので、公表した予算や事業計画が今後達成できない、という流れなら理解できるのですが、言わば“終わった期”の財務諸表が正しいか、について疑義が残るというのはどういうことですか?

大森:いい質問だ。継続企業の前提に疑義を生じさせる状況って、具体的にはどういうことが考えられるかな?

財部:業績の不振などですか?

大森:そうだね。不振に陥った理由は?

上場:そうか!市場競争力の低下、為替相場の変動、有力取引先との取引解消。今だと重要な原材料の確保困難なども大きなリスク要因ですね。当社も含めた消費者向けビジネスではブランド価値を損なうことも大きなリスクです。

大森:いいねえ。もしそういうリスクが顕在化した場合、例えば、在庫の価格はどうなるんだろう?生産や販売ができなくなったら工場などの生産設備やシステムの資産評価額は、と考えると?

上場:なるほど。期末時点の評価を下回ることになりますね。

大森:継続企業の前提で財務諸表を作成しているという意味合いと、その前提が崩れると企業の評価が変わる可能性があるということは理解できたかな。そしてゴーイングコンサーンが重要ということも。

上場:自分なりに整理してみますが、ニュアンスとしては理解できました。

経営へのSDGsの取り込み

大森:では本題に戻って、SDGsにどう取り組むか、原案をまとめよう。

上場:はい、お願いします。

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