
イラスト/もとき理川
大森:皆さん、こんばんは。
上場・財部・株谷:こんばんは、よろしくお願いします。
大森:困ったことが発生しているって?
上場:そうなんです。当社の経営会議の後に、喫緊の経営課題ではない、長期的な課題をブレーンストーミング的に話し合うという趣旨で、ランチMTGがあるんですが⋯⋯。
大森:なるほど、なるほど。
上場:長期的な課題の頭出しの当番で、利子が発表したのですが、「当社のSDGsへの取り組みと開示内容について」という感じで発表をしました。
財部:前半部分の株式市場で注目されている背景などについては、特に問題なく進んだと思うのですが⋯⋯。
上場:そうよね。みんな「興味深いテーマだね」「一度議論してみたかった」という反応だったし。
財部:「当社の現状と今後の取り組み方針」について考えましょう、と頭出しを行って自由討論に入ったあたりで問題が発生しました。
上場:「〇〇に取り組んだ方がよい」といった具体的な話が出ると、「それはコストがかかる」「どこの部署がやるんだ」など、様々な立場の役員がいるので紛糾してしまい、最後は「IR室で原案をまとめてこい」という話に⋯⋯。
大森:総論賛成各論反対みたいな話だね。
株谷:コンセンサスを得るまでの議論としてはあるあるですね⋯⋯。それにしても、本来、経営企画の仕事だよね?
上場:そういう意見も出たのですが、開示の話を最初にしたので、それだったら、IR室が主で、各部と連携してという話に落ち着きました。
株谷:ご愁傷さまです⋯⋯。
上場:というわけで、今日はこの問題への対応策をお聞きしたい、と思っています。
財部:本当は「当社のSDGs対応の基本方針をどうするか」をお聞きしたいのですが、勉強会の主旨とは異なると思いますので、どういう手順で、何を検討すべきかをお聞きしたいと思います。
上場:少し補足すると、手順や検討すべき項目といった枠組みを一緒に考えていきたいです。
SDGsウォッシング批判とは?
大森:では、まず考えていることを整理してください。
財部:はい。手順として、まず、同業他社の状況を少し幅広く収集します。それを基に当社としてやるべき分野を絞っていき、時間軸でできることを分類して、発表しようかなと思っています。
大森:開示という意味では、同業他社や先行企業の調査は合っているけど、それだとIRの仕事であって、全体で議論する内容ではないし、なにより失敗する開示事例の典型になりかねないねえ。
上場・財部:き、厳しい。
大森:ははは、株谷さんはどう思いますか?
株谷:はい、失敗する開示事例の典型かどうかは分かりかねますが、そもそも紛糾した事案の解決策としては、妥当ではないと思います。SDGsへの取り組みやその開示への批判として、「SDGsウォッシング」という言葉がありますが、その...